「また買いたい」はどう生まれる?ECにおける顧客ロイヤルティのつくり方
ECにおいて、顧客ロイヤルティは重要なテーマです。新規顧客の獲得コストが高まる中、既存顧客に継続して購入してもらうことの重要性は以前にも増しています。
ただし、ここで注意したいのは、「何度も購入している顧客=ロイヤルティが高い顧客」とは限らないということです。
顧客がなぜ買い続けているのか。その理由まで考えなければ、本当の意味での顧客ロイヤルティは見えてきません。
買い続けているからといって、ロイヤルティが高いとは限らない
ECでは、購入回数や購入頻度、LTVなどから優良顧客を分類することがあります。もちろん、これらは顧客の状態を知るうえで重要な指標です。
しかし、購入回数が多いことと、顧客ロイヤルティが高いことは同じではありません。
たとえば、「いつも買っているから」「価格が安いから」「他の商品を探すのが面倒だから」といった理由で購入を続けている顧客もいます。この場合、より安い競合商品や便利なサービスが現れれば、簡単に乗り換えられてしまう可能性があります。
つまり、行動としてリピートしていることと、心理的にそのブランドを優先していることは分けて考える必要があります。
購買履歴からわかるのは、あくまで「これまで選ばれてきた」という事実です。重要なのは、「次の購入機会にも選ばれる状態になっているか」です。
顧客ロイヤルティとは「自社が好きか」ではなく「競合より選ばれるか」
顧客ロイヤルティという言葉から、「ブランドを好きになってもらうこと」「ファンになってもらうこと」をイメージすることがあります。
もちろん好意は重要です。しかし、ECビジネスで考えるべきロイヤルティは、それだけではありません。
重要なのは、顧客が商品を必要としたときに自社を思い出し、競合より優先して選んでくれるかどうかです。
たとえば、ワインを買おうと思ったとき、いくつものECサイトを比較する前に特定のショップを思い浮かべる。化粧品がなくなりそうになったとき、「次もあの商品を買おう」と自然に思う。
このように、購入ニーズが発生した瞬間に最初に思い出される状態が「第一想起」です。
どれほど自社の商品に満足していても、購入時に競合しか思い浮かばなければ、次の購入にはつながりません。
そのため顧客ロイヤルティは、単純な「自社への好意」ではなく、顧客の頭の中における選択順位の高さとして捉えることが重要です。
第一想起を取るためには「マインドシェア」が重要
では、どうすれば第一想起を取ることができるのでしょうか。
前提になるのは、商品やサービスに満足してもらうことです。商品品質に問題があったり、配送や顧客対応への不満があったりする状態では、ロイヤルティを高めることはできません。
信頼も同様です。安心して購入できるショップであることは、継続購入の土台になります。
しかし、満足や信頼だけでは十分ではありません。
一度購入して満足しても、その後半年間まったく接点がなければ、顧客の頭の中からブランドの存在は薄れていきます。その間に競合企業の広告やSNS、メールなどに接触すれば、次回購入時にはそちらが先に思い浮かぶかもしれません。
そこで重要になるのが、顧客の頭の中でどれだけ自社の存在感を維持できているか、つまりマインドシェアです。
特にECでは、店舗の前を通る、店頭の商品を見るといった自然な接点がありません。そのため、何もしなければ購入後の顧客との接点は途切れやすくなります。
意図的に接点をつくり続けることが重要になります。
ロイヤルティを左右するのは「接触頻度」
マインドシェアを維持するうえで重要なのが、顧客との接触頻度です。
メール、LINE、SNS、Webサイトなどを通じて継続的に接点を持つことで、ブランドやショップの存在を思い出してもらう機会を増やすことができます。
ただし、単純に配信回数を増やせばよいという話ではありません。
毎日のようにセール情報だけを送り続ければ、顧客にとってはノイズになり、逆にブランドへの印象を悪化させる可能性があります。
重要なのは、顧客にとって意味のある接触を一定頻度で継続することです。
購入した商品の使い方を紹介する、関連する情報を届ける、買い替えのタイミングで案内する、新商品を紹介する。こうした接触であれば、売り込みだけではなく、顧客にとっての価値を生みながら存在を思い出してもらえます。
「また買いたい」を生む接触とは
顧客との接触を考える際に重要なのは、「何を売るか」から考えないことです。
たとえば購入直後であれば、次の商品を勧めるよりも、購入した商品の使い方や楽しみ方を伝えるほうが自然です。
一定期間が経過していれば、消耗品の再購入を案内したり、過去に購入した商品と相性のよい商品を紹介したりすることができます。
また、ブランドの考え方、商品の開発背景、生産者のストーリーなどを伝えることも接点になります。
こうしたコミュニケーションを積み重ねることで、顧客の中に「このカテゴリーならこのショップ」という認識が形成されていきます。
セールやクーポンは購入のきっかけにはなりますが、それだけに頼ると「安いときに買うショップ」になりかねません。
目指すべきなのは、購入する理由をつくること以上に、購入しようと思ったときに自然と思い出してもらえる状態をつくることです。
顧客ロイヤルティは購入回数だけでは測れない
顧客ロイヤルティを評価するときも、購入回数だけを見るのは十分ではありません。
リピート率、購入頻度、LTV、継続率といった行動指標は重要ですが、それらに加えて、「次に購入するときに自社を選びたいと思っているか」という心理的な状態を見る必要があります。
アンケートで第一想起や競合との比較を確認する方法もありますし、メールやLINEへの反応、サイト訪問、再購入までの期間などから顧客との関係性を把握することもできます。
大切なのは、過去の購入実績だけで「ロイヤル顧客」と決めつけないことです。
顧客ロイヤルティとは、これまで何回買ったかではなく、これからも選ばれる可能性がどれだけ高いかという視点で考えるべきものです。
顧客が何度も購入しているからといって、必ずしもロイヤルティが高いとは限りません。
ECにおける顧客ロイヤルティで重要なのは、自社を好きになってもらうことだけではなく、購入ニーズが発生したときに第一想起され、競合より優先して選ばれることです。
そのためには、商品やサービスへの満足、信頼を前提としたうえで、購入後も継続的に顧客との接点を持ち、マインドシェアを維持していく必要があります。
「また買いたい」は、一度の優れた購入体験だけで生まれるものではありません。
顧客に忘れられず、必要なときに思い出してもらう。そのための継続的な接触こそが、顧客ロイヤルティをつくる重要な要素です。