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EC事業者に知ってほしい「業務改善助成金」の活用ポイント

近年、EC業界では人材不足や人件費の上昇が深刻な課題となっています。とりわけ中小規模のネットショップでは「人は足りないが、採用にかける資金も限られている」という状況が続いており、経営者にとっては頭の痛い問題でしょう。そこで注目を集めているのが「業務改善助成金」です。厚生労働省が管轄するこの制度は、賃金引き上げと生産性向上をセットで支援する仕組みであり、比較的利用しやすい助成金のひとつとして近年人気を集めています。

業務改善助成金とは?
「業務改善助成金」は、最低賃金を一定額以上引き上げる企業に対して、そのための設備投資や業務改善にかかる経費を国が助成する制度です。特に本年度最低賃金は大幅に引き上げられたので、対象の企業は多いと思われます。例えば、以下のような投資が対象になります。
●EC店舗の在庫管理システムの導入
●作業効率を高める自動梱包機の購入
●業務フロー改善のための外部専門家コンサルティング費用

補助金(経済産業省系)と異なり、採択・不採択といった競争的審査がなく、要件を満たしていれば申請が通る仕組みになっています。
ここが最大のメリットであり、経営者にとっては取り組みやすい制度だといえます。
詳細はこちらになります。(厚生労働省WEBサイト)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html

注意点:書類の煩雑さと申請のタイムラグ
ただし「申請すれば必ず助成される」と聞くと簡単に感じてしまうかもしれませんが、実務面では注意が必要です。
まず、書類の作成が非常に煩雑であるという点です。助成対象経費の見積書、賃金引き上げ計画、実施前後の業務フロー比較、就業規則や給与台帳の写しなど、多数の書類を用意する必要があります。とりわけECショップの現場では、労務管理がクラウドで行われていることも多く、フォーマットの不一致や追加証憑の提出を求められるケースも少なくありません。さらに近年の人気の高まりから、申請件数が急増しています。申請から実際の入金まで半年以上かかるケースも見られるため、資金繰りに余裕を持って取り組むことが不可欠です。「今すぐ資金が欲しい」といった緊急性の高い場面には向かない助成金といえます。

ECショップでの具体的な活用シーン
倉庫業務の効率化:ピッキング作業に時間を取られていたスタッフを、音声認識システムやタブレット導入によって短縮。浮いた時間で新商品の登録やSNS運用等に回すことができる。
顧客対応の自動化:チャットボットやCRMシステムを導入し、問い合わせ対応時間を削減。結果として残業時間を減らし、スタッフの時給アップにもつなげられる。
外部委託の最適化:物流代行サービスの利用や梱包資材の標準化なども助成対象になる場合がある。現場負担を減らしながらサービス品質を向上できる。

コンサルタントとしての提案ポイント
1. 助成金ありきではなく、業務改善の青写真を描くこと
「どの作業を効率化したいのか」「どの業務に人手がかかりすぎているのか」を可視化し、その解決策の中で助成金を活用する、という順番で検討するとスムーズです。
2. 申請スケジュールを逆算すること
書類準備と入金時期を踏まえ、資金繰り計画と連動させる必要があります。特に年末商戦やセール期を意識した設備投資では、タイムラグが致命的になる可能性があります。この逆算するテクニックが必要不可欠です。
3. 社労士や専門家との連携を強調すること
労務関連の証憑が多いため、社労士との協力はほぼ必須です。ECの現場改善と労務要件をつなぐ役割をコンサルタントが果たすことで、クライアント様からの信頼も高まります。確実に助成金を獲得するためには、申請業務は社労士さんと連携で行うのが無難です。

まとめ:「業務改善助成金」は、EC事業者にとって人材不足時代を乗り越える有力な手段です。ただし、書類の煩雑さや入金までのタイムラグといった注意点も無視できません。コンサルタントは「制度の存在を紹介する」だけでなく、「業務改善の設計から資金繰りまで一貫して伴走できるパートナー」であることを示すチャンスでもあります。競争の激しいEC市場において、人材の定着と業務効率化は生き残りの鍵です。助成金を上手に活用し、持続可能な成長を実現していきましょう。
それではご利用は計画的に。

JECCICA客員講師 渡辺 太志

(株)アイズモーション経営企画部長 プロフィットシステム常務取締役 コンサルタントとして企業の経営戦略から組織開発までトータル支援が可能。 SNSを活用した集客・販促により宣伝広告費の圧縮を行い、経営改善に繋げるシステム作りのコーディネートを得意とする。

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