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「住所って、こんなに優しかったんだ」──レムトスが描く、見えない課題との40年

変わっていく社会、変わらない“つまずき”
便利な世の中になりました。スマートフォン一つで、なんでも買えるようになり、AIが自動で商品をおすすめしてくれる。ECは加速度的に進化し、多くの人が日常的にネットで買い物をする時代が到来しました。

けれど、その一方で──。商品をカートに入れて、住所を入力する場面で、なんとなく手が止まってしまう。あれ、郵便番号は合ってる?市町村が見つからない。昔の町名のままかも?そんな“ちょっとしたつまずき”を、私たちはいつの間にか「仕方ないもの」として受け入れてしまっているのかもしれません。

そのつまずきを、40年という時間をかけて解決しようとしてきた会社があります。レムトス。彼らは、住所や人名という地味だけれど大切な情報と向き合い続けてきた、「辞書屋」と呼ばれる会社です。

始まりは、ATM風のどでかいデバイスにありました
何気なく馴染みのある「いとうさん」。その表記は88種類──そんな世界を、私たちはほとんど知りません。けれど、コールセンターで「翫(いとう)」という名字を聞いた瞬間、「伊藤」が「当たり前の情報」ではないことに気付かされます。

レムトスは、そうした場面に備えるため、創業当初、膨大な人名・地名のデータを収集し、ATM風の端末を提供し、コールセンター支援ツールにそういう情報を辞書として組み込んできました。

漢字の読み違え、住所の言い間違い──人のミスを責めるのではなく、技術で包み込む姿勢が、レムトスの原点でした。

代表の金子忍さんは、先代から受け継いだこの技術に、強い使命感を持って向き合ってきました。「自分たちのデータが人の役に立つなら、どこまでも磨き続けたい」──その思いで、全国の地名や苗字を一件ずつ調べ上げ、辞書データを育ててきたのです。

千里の道も一歩から──“誰でも使える”カラーミーアプリへの挑戦
時代が進み、専用端末のニーズは減少していきます。しかし、データの価値はむしろ高まりました。住所入力のミス、伝票作成の誤り、配送現場の混乱──それらが積み重なれば、企業にとってもお客様にとっても、見えないストレスになるからです。

それで踏み出した新たな一歩が、「カラーミーショップ」でした。

ECサイト構築サービスとして多くの事業者が使うカラーミーショップのアプリストアに、2023年、レムトスの《辞書屋の住所クリーニングWebAPI》が掲載されました。ボタン一つで、あの“見えない課題”が解消できるようになったのです。

あるショップでは、毎日数十件の住所ミスに悩まされていたといいます。郵便番号と市区町村名が一致しないため、伝票が作成できず、確認の手間がかかる。その現場で、このアプリが導入されたことで、劇的に作業が改善されたという声も届いています。

技術的な敷居の高さを解消し、「誰でも使える」形にする──それは、レムトスにとって大きな一歩でした。

“住所”という見えないインフラ
では、なぜそもそも住所入力はこんなにも間違いが起きるのでしょうか。

郵便番号を入れれば自動で出てくる──そんな感覚があるかもしれませんが、実は日本の住所事情はそう簡単ではありません。複数の町名が1つの郵便番号に割り当てられていたり、市町村合併によって表記が変わっていたり、濁点や記号の表記揺れがあったり。

そうしたミスが発生するのは、ある意味“当然”のことなのです。

にもかかわらず、企業側も利用者側も、正面からこの問題に向き合ってきませんでした。配達業者がなおしてくれる。顧客からクレームがなければそれでいい。そうした“なんとなく”の空気が、根本的な改善を遅らせてきたのです。

この状況を、「いや、それじゃダメなんです」と訴え続けてきたのがレムトスでした。

Gyro-n EFOとの出会い──“配慮”を技術に込めるということ
そのレムトスの哲学に共鳴したのが、フォーム最適化ツール「Gyro-n EFO」でした。

EFO(Entry Form Optimization)とは、入力フォームの離脱率を下げるためのUI改善技術です。入力ミスを減らし、ストレスを減らし、結果としてコンバージョン率を上げてくれる。Gyro-n EFOは、すでに多くの企業に導入され、成果を上げてきました。

しかし、そのGyro-n EFOにも、最後まで取り残されていた領域がありました。それが「住所」でした。そこで、レムトスとの連携が始まったのです。入力フォームに《辞書屋のWeb Solution》を組み込むことで、古い町名でも、表記揺れでも、誤字でも、やさしく正しい住所に補正してくれるようになります。

たとえば──
「棟京都港区木六本3丁目」
というような崩れた住所入力でも、
「東京都港区六本木3丁目」
と自動で修正してくれる精度。それは、58万件の住所辞書と10年以上の開発期間をかけたレムトスの努力と汗の結晶によって支えられています。

EFOは単なる入力支援ツールではありません。それは、ユーザー一人ひとりの“つまずき”に寄り添う、見えない接客です。だからこそ、レムトスの思想とぴたりと重なったのです。

レムトスが40年をかけて見つめてきたのは、派手なテクノロジーではなく、「不器用でもいい。だけど、ちゃんと届く社会」をどうやって作るか、という問いでした。

だからこそ、彼らの仕事はこれからも続きます。たとえ表に出なくても、技術が誰かをそっと助ける未来のために。

今日はこの辺で。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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