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トランプ関税による越境ECへの影響は?

■トランプ大統領による関税政策
米国のトランプ大統領による関税率の引き上げ声明の発表によって、全世界が混乱しています。株価がこれまで経験したことのないようなジェットコースター的な値動きをしており、混乱ぶりが伝わってきます。残念ながら日本は例外とはなっていませんが(※本稿執筆時点)、そもそもトランプ大統領の関税政策が今後どのように展開するのか、誰も予想することができない状態です。しかしながら、どうやら同大統領は中国を明確なターゲットにしているのは間違いなさそうです。各国に向けた関税率は緩む方向に変化するかもしれませんが、いずれにせよ中国に対してはかなり厳しい態度で臨み続けることは間違いないようです。

■日本から米国に向けた越境ECに影響はあるか?
さて、仮に日本からの輸入分に関する関税率が大幅に上昇したと仮定して、越境ECへの影響について考えてみたいと思います。越境ECには二つの方式があります。ひとつは相手国(今回で言えば米国)に一般貿易を通じて予め輸出しておき、相手国側の倉庫から出荷する方式です。もう一つが日本に在庫を持っておき、日本から出荷する方式です。前者を“広義の越境EC”、後者を“狭義の越境EC”と私は呼んでいます。前者についてはあくまでも一般貿易ですので、関税率上昇による影響は明らかにあります。しかしながら後者については、米国人消費者による個人輸入扱いになりますので、いわゆる「デミニミス・ルール」によって800USDまでは免税となっていることから、大きな影響はないと見られます。

■中国が受ける影響
とすれば、米国人消費者に向けた全世界からの“狭義の越境EC”はほとんど影響を受けないだろうと考えられます。ところが、米国政府は中国に対して、このデミニミス・ルールの適用を2025年5月2日以降除外すると発表しました。これによって、中国から米国人消費者に向けた“狭義の越境EC”は大打撃を受けると想定されます。もちろん、米国人消費者が好んで中国製品を越境ECで購入し続けるのであれば別ですが、やはり関税の負担は大きいと思いますので、マイナスの影響が出るのは必至でしょう。

■TEMU、Shein、AliExpressが受ける影響は大きいのでは?
次のグラフは、全世界の消費者を対象とした、越境ECで最近購入した先に関するアンケート結果です(調査時期は2024年9月)。これを見るとトップはAmazonで24%なのですが、以降はTemuが21%と肉薄しており、次いでAliExpress10%、Shein9%となっています。この3者合計で40%を占めていることになります。それだけ全世界の消費者は中国系越境EC事業者から購入しているということです。当然ながらこれは米国でも同様と思われますので、今回のデミニミス・ルール撤廃によってこれらの中国系越境ECは打撃を受けることでしょう。

■想定される日本への間接的な影響
もしTEMU、Shein、AliExpressが大きな打撃を受けると仮定しましょう。そうすると、中国系越境EC勢は米国以外に目を向けることになります。欧州、アジア、そして日本に対して大掛かりな販売攻勢を仕掛けてくるのではと予想されます。特に日本ではTEMUがすっかり浸透しています。TEMUが日本に上陸したのは2023年7月ですが、僅かな期間であっという間に顧客基盤が拡大しています。2024年時点でのマンスリーアクティブユーザー数は楽天の3分の1という推計もあります。TEMUは日本のEC事業者にとって脅威になっていますので、その脅威度がさらに増すことが考えられます。これはまさにトランプ関税による間接的な影響と言えるでしょう。もっとも、約安くて良い商品を消費者が手に入れることができるのであれば、消費者目線では良いことではあります。

■リスクヘッジの重要性
繰り返しになりますが、トランプ関税が今後どのようになるのか誰も予想ができません。日本のEC事業者に対しマイナスの影響がないことを願うばかりですが、ふとしたことがきっかけでビジネスには大きな変化が生じるかもしれないということを、あらためて痛感させられる出来事のように私は捉えています。海外を起点としたまさに外的要因による変化に対しては、どうしても受け身にならざるを得ません。これから先、トランプ関税以外にも様々な外的要因が降りかかってくるかもしれませんので、あらかじめ自社のビジネスについて、リスクヘッジ的なことを考えておくと良いのではないでしょうか。

越境ECで最近購入した先
(調査時期:2024年9月)

出典:IPC Cross-Border E-Commerce Shopper Survey 2024 (Statista経由で取得)

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 本谷 知彦

株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役


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