信頼できる企業をレビューで見つける。レビュープラットフォーム「Trustpilot」
こんにちは。この記事を書いているのは8月下旬です。毎日、暑い日々が続いています。私事ですが、海外旅行に行くことになり、色々なサイトを見ていたら、「Trustpilot(トラストパイロット)」というサービスを見つけて、興味を持ったので調べてみました。
企業や商品のレビューを共有できるプラットフォーム「Trustpilot」
Trustpilot( https://jp.trustpilot.com/ )というサービスは皆さんご存知でしょうか。オンラインで企業や商品のレビューを投稿・閲覧できるプラットフォームです。消費者が製品やサービスについての評価や感想を共有し、他のユーザーに情報を提供することを目的としています。本社はデンマークのコペンハーゲンにあり、ロンドン、ニューヨーク、デンバー、ビリニュス、ベルリン、メルボルン、エディンバラ、ミラノ、アムステルダムにオフィスを構えています。
レストランを探すとき、映画を観るとき、旅行に行くとき、家電製品を探すとき、私は必ずレビューサイトや、サイト内のレビューを見てしまいます。気づかずにレビューを検索したりしているのでもう無意識と言っても過言ではありません。レビュー以外にもSNSの口コミを読んで購入することも多いですよね。それほどにレビュー・口コミのパワーは強大です。
Trustpilotの主な機能と特徴
1.レビューの投稿と閲覧が可能
Trustpilotはユーザーが企業や商品に関するレビューを投稿できるプラットフォームです。ユーザーは経験や意見を共有し、評価を付けることができます。一方で、他のユーザーはこれらのレビューを閲覧して、製品やサービスについての意思決定を支援するための情報を入手できます。
2.信頼性と透明性を重視
Trustpilotは信頼性の高い評価やレビューを得るためのガイドラインを定めており、公正で透明なレビューを提供することを重視しています。また、後述しますが、偽のレビューなどの虚偽情報を排除する努力を行っています。
3.企業連携
企業もTrustpilotを活用して、顧客の声を収集し、サービスや製品の改善を行うことができます。また、企業は自社のTrustpilotページを管理し、顧客からのフィードバックに対して返信することも可能です。
4.スターレーティングシステム
Trustpilotのレビューは、通常、星1から5の段階で評価できます。ユーザーは一目で評価の高さや低さを把握することができます。
5.グローバル展開
様々な国と言語に対応しており、日本のユーザーでも海外の企業やサービスに関するレビューを確認・共有することができます。
普通のレビューと何が違うの?
レビューが確認できるサイトでぱっと思い浮かぶのは、AmazonやGoogleマップ、食べログ、アットコスメ、楽天トラベルなどではないでしょうか。また、比較サイトだと価格.comやmybestなどもSEOで強いですよね。これらのレビューの特徴は、商品や実店舗に紐づいていることです。
こういった商材の場合は、レビューを容易に確認できますが、リアル店舗を持たないD2Cブランドの小売業や購入代行、そもそも商品の発送が不要なデジタルコンテンツやチケットサイトなどを販売する企業やサイトのレビューは、なかなか確認することができない状況です。X(旧Twitter)などのSNSで検索したり、ということが多いのではないのでしょうか。その点、Trustpilotは企業やサイトへのレビューを確認することが可能なのです。
Trustpilotの導入状況(ヨーロッパと日本)
Trustpilotのサイトでは、企業名やカテゴリーからレビューを検索することもできます。Trustpilotでは日本語対応されており、以下のカテゴリーと企業名から検索することが可能でした。
企業のカテゴリー
イベント・エンターテインメント / 住まい・ガーデニング / 教育・研修 / ショッピング・ファッション / 住まいのサービス / 旅行・休暇 / スポーツ / 健康・医学 / 美容・健康 / ビジネス サービス / 公共サービス・地域サービス / 趣味・工芸 / 公益事業 / 金融・保険 / メディア・出版 / 動物・ペット / レストラン・バー / 司法サービス・政府機関 / 電子機器・テクノロジー / 乗り物・運輸 / 建設・製造 / 食べ物・飲み物・タバコ
かなり幅広いカテゴリーのレビューを検索することが可能です。カテゴリーをクリックすると、そのカテゴリーの企業が一覧で表示され、サイドメニューから絞り込むことが可能です。
例えば、「ショッピング・ファッション」カテゴリで日本が所在地の企業ショッピング・ファッションの企業検索してみると、全体で78件がヒットし、企業ステータスが確認済み(身分証明などの追加的な情報を確認した企業)で絞り込むと25件、Trustpilotのプロフィールを登録済みで絞り込むと72件でした。日本だとまだまだ参加している企業やレビューが書かれている企業は少ないようです。
ではヨーロッパの国々だとどうなのでしょう。Trustpilotはデンマーク発の企業なので、ヨーロッパで普及しているのではという想像のもと、GDP上位のドイツ、イギリス、フランスも同じカテゴリーで調べてみました。
本社+ヨーロッパGDP上位3位の「ショッピング・ファッション」のカテゴリで検索してみた結果
●デンマーク(本社):6,623件
●ドイツ:4,093件
●イギリス:10,000件
●フランス:3,975件
イギリスが突出して多く、ドイツがその半分以下でデンマークよりも下回るという結果になりました。ちなみにTrustpilotの多言語対応は以下の言語でした。上記4カ国は対応しているので、言語の対応可否が件数に影響を与える訳ではないようです。企業数や国民あたりの小売店の充実度、国民性、他社サービスの有無など更に深掘りしてみないと国別の件数の違いについては分からなさそうです。
Trustpilotが対応している言語(50音順)
アイルランド / アメリカ合衆国 / イギリス / イタリア / オーストラリア / オーストリア / オランダ / カナダ / スイス / スウェーデン / スペイン / デンマーク / ドイツ / ニュージーランド / ノルウェー / フィンランド / ブラジル / フランス / ベルギー / ポーランド / ポルトガル / 日本
Trustpilotが抱える課題
Trustpilotが現在注力しているのは、偽レビューやサクラレビューの撲滅です。Trustpilotのように実在する本当の人間が書いたレビューであれば、良いレビューも悪いレビューも歓迎するという姿勢を保っています。一方でレビューを書くための門戸を開くと、一部の批判的な意見や問題も存在するのが実情です。偽のレビューや評価の操作、悪意のある評価などが問題となることがあります。Trustpilotはこうした問題に対処するため、信頼性を維持するための取り組みを行っています。
Trustpilotの公式サイトによると以下の取り組みを24時間体制で取り組んでいるそうです。
Trustpilotサイトに記載の内容を要約
( https://jp.trustpilot.com/trust/combating-fake-reviews )
●プラットフォームを保護しているスタッフ:88人以上
●削除された偽レビュー数 : 270万件以上(2021年)
●自動システムのレビュー分析:平均10万件/日
●フラグが立てられた不審なレビューの月次件数:9,000件以上
消費者は偽と思われるレビューにフラグを立てることができ、Trustpilotはそれらを調査するそうです。
また、Forbesの昨年2022年8月2日の記事『「偽レビュー」追放に苦慮するフェイスブックと英国政府の動き』( https://forbesjapan.com/articles/detail/49282 )にはさらに詳細な情報が記載されていました。記事によると、Trustpilotは昨年、4670万件以上のレビューのうち、270万件以上の偽レビューや誤解を招く恐れのあるレビューを特定し削除したと発表しており、新たな技術を導入して偽レビューを追跡・排除する努力をしているとしています。また、イギリス政府は偽レビューの販売や広告を禁止し、プラットフォーム事業者にレビューの真正性を確認する義務を課す新法案を計画しており、プラットフォーム事業者に対して罰金を科す権限を与える方針だそうです。
消費者への情報の透明性・公平性がより強固に求められる時代に
口コミやレビューは人々の心理や消費行動に大きな影響を与えます。レビューを見慣れている方だと分かると思いますが、レビューすべてが正しいとは限りません。商品を購入する際の参考にしつつも、最終的な意思決定をする際には自分の判断基準を持つことが重要です。欧州やシリコンバレーにおいても、投資の判断軸としてSDGsやESGに取り組んでいるかどうかが投資の判断基準として重要になっています。
今後、倫理的で透明性・公平性が高い消費がより重視されることは、昨今の潮流を見ても明らかでしょう。今後、われわれサービスを考える側もさらに意識しなければならないと考えさせられました。
JECCICA客員講師 村石怜菜
株式会社パルコ・シティ シニア・コンサルタント。
日本女子大学被服学科卒。大手専門店企業で接客販売・店舗運営を経験した後、Eコマース支援企業で数々のファッションブランドのECサイトの構築や運用に携わる。現在は、ファッション専門店や商業施設へのECコンサルティングを得意としている。また、クライアント企業のオムニチャネル戦略の計画・実行を支えている。