ネットショップの教科書97 暗闇トンネルを抜けて需要上向きの気配 「Amazonグローバルセリング」の実践
昨年の暮れにご紹介しました「Amazon越境EC」は、コロナ禍の影響もさることながら、ロシア プーチン大統領の暴挙とも言えるウクライナへの軍事的侵略の影響で先が読めない状況です。これらが解決し世界が平穏を取り戻した時には、必ず物の動き「越境EC」の需要は高まります。その時のためにもグローバル販売戦略の再構築、実践的な販売手法の学習は進めておきたいところです。
「越境EC」を行う場合、物流や輸出入手続き、税など様々な問題をクリアしないといけません。日本から日本国外(海外)のお客様にECを行う場合、多くの実績をもつAmazonの利用がオススメです。Amazonで用意している「Amazon.co.jp アカウントでFBA配送商品プログラム」にせよ、「Amazon海外(日本国外)アカウントでグローバルセリング」にせよ、取り組み実践するには学習・実践・経験が役立ちます。
Amazon.co.jpセラーセントラルのヘルプをもとにわかり易く解説します。
2021年12月号の会報紙でご案内しましたが、
Amazon.co.jp アカウントでFBA配送を行っている出品者は「FBA配送商品プログラム」で手軽に、そのフルフィルメントby Amazon(FBA)商品情報を適用し、67以上の国や地域に商品を海外に販売する「FBA海外配送プログラム」を利用することができます。
一方、Amazon.co.jpより圧倒的に訪問者、購入者の多いAmazon.comなど海外の地域国統一アカウントに出品し、商品を現地に預ける「Amazonグローバルセリング」は、購入の際に、Amazon.co.jpにアカウント登録の必要がなく、他の自国、近隣国の地域国統一アカウントで購入でき、配送料、通関費用など不要なコストをかけず、しかも早いお届けが可能となります。
Amazon統一アカウント:ひとつの統一アカウントで管理
・Amazonマーケットプレイス:北米
(米国/カナダ/ブラジル/メキシコ)
・Amazonマーケットプレイス:ヨーロッパ
(イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン)
・Amazonマーケットプレイス:アジア太平洋
(日本/オーストラリア/シンガポール/インド)
欧米、欧州、アジアのひとつの統一アカウントで管理ができます。
「Amazonグローバルセリング」を利用し、「FBA海外配送プログラム」を実践するに当たって、日本のアカウントをベースに関連付け「アカウントを統合」することにより、グローバル出品連携ツールを利用し、商品を出品、海外への発送、FBA納品が可能となります。
Amazon.co.jpのアカウントを持っている場合は、オンラインの出品者登録プロセスを、英語と日本語で案内しており、セラーセントラルでのアカウント管理に用いる言語を、日本語と英語から選択できるようになります。
「FBA海外配送プログラム」は、追加料金なしで海外に販売することができ、出品者がFBA海外配送対象にした商品を海外の購入者が、出品者の国のマーケットプレイスを閲覧して購入することができます。
海外の購入者が、67以上の国や地域から出品者の国(日本)のマーケットプレイスを閲覧して、購入する場合、海外への配送料や、通関でかかる輸入税、関税等は購入者が支払います。「FBA海外配送プログラム」を利用するにあたり、出品者に追加料金の支払いは発生しません。FBA海外配送から商品を除外することや、対象となる国を除外することも可能です。FBA海外配送で出荷された商品が返品可能かどうかは、Amazon返品ポリシーに基づいて判断されます。購入者が商品を返品した場合、商品はAmazonの返品ポリシーに従って処理されます。返品された商品が販売可能な状態で届いた場合は、出品者の在庫に戻されます。
海外配送の場合、返品費用が国内配送より高額になることから返品ポリシーは重要です。返品商品が販売不可の状態で届いた場合は、Amazonが責任の所在を判断し、出品者に責任がないと判断した場合は、破損・紛失商品の返金ポリシーに従って出品者に返金しますが、商品に不具合がない場合は、返品の配送料は購入者の負担となります。商品に不具合がある場合、購入者が返品の配送料をいったん負担し、Amazonフルフィルメントセンターに返送します。Amazonは、返品商品を受け取った後、支払われた返品の配送料を購入者に返金します。
それでは、「Amazon海外(日本国外)アカウントでのグローバルセリング」を設定登録する方法を順追って紹介します。
出品ガイド—日本編—
(Amazonヘルプより一部引用)
日本のアカウントで設定する。
1.現地銀行口座開設
グローバルアカウントの支払いについては、以下を選択できます。
・マーケットプレイスにある銀行口座を開設する。
出品者が財務勘定を細部にわたって管理する場合は、出品を希望する国で銀行口座を開設できます。これには、その国に法人企業を設置する必要があり、より複雑な処理になるため、法律、税務の専門家、および銀行顧問に相談することをオススメします。
・出品するマーケットプレイスにある銀行口座を使用する。
出品者が財務勘定を細部にわたって管理する場合は、出品を希望する国で銀行口座を開設できます。これには、その国に法人企業を設置する必要があります。
・Amazonが提供する海外口座送金サービスを利用する。
・外部の第三者機関が提供する海外送金サービスを利用する。
〔Amazon海外口座送金サービスの登録方法〕
1)設定メニューの出品用アカウント情報をクリック。
2)出品用アカウント情報ページで、支払情報の銀行口座情報ボタンをクリック。
3)銀行口座情報ページで、ドロップダウンリストから既存の口座を選択するか、
4)または登録をクリックして新しい銀行口座を登録。
5)銀行所在国ドロップダウンメニューから銀行口座を開設している国を選択。
6)銀行口座情報を入力し、利用規約に同意し送信ボタンをクリック。
7)これにより、該当の口座に対してAmazon海外口座送金サービスが有効となる。
※Amazon海外口座送金サービスの手数料
Amazon海外口座送金サービスを有効にすると、出品用アカウントにプラスの残高がある場合、ペイメントの一覧ページにある為替レートを表示するボタンをクリックする。出品者の銀行口座に送金する際に適用される為替レートを確認可能。適用される為替レートには、Amazon海外口座送金サービスの利用に関連するすべての料金と手数料が含まれる。
〔各マーケットプレイスの出品用アカウント登録要件〕
-米国-
有効なクレジットカード、銀行口座、電話番号、納税情報を入力する必要があります。また、オンラインで質問に順番に回答して、W-9フォーム(米国の納税者)と、W-8BEN(米国以外の納税者)のどちらの記入が必要かを確認する必要があります。税金の詳細な情報は米国の税および規制に関する注意事項をご覧ください。パスポート、国民ID、銀行口座明細書、クレジットカード明細書のコピーなどの追加書類を提出しなければならない場合もあります。
-ヨーロッパのマーケットプレイス-
有効なクレジットカード、電話番号、納税情報を入力する必要があります。VAT番号の入力も必要です。VAT番号を入力せずに登録を完了することもできますが、ヨーロッパで出品するためにはVAT番号の提示が必要です。
2.VAT登録について
日本の消費税に似た税が、欧州で言う付加価値税(VAT)です。ヨーロッパのVAT登録トレーダーが販売する商品の価格に追加し、納税申告書を提出するときに国の税務当局に転嫁する税金です。ヨーロッパの国で商品を販売する場合、販売する国ごとに付加価値税(VAT)の登録が必要になる可能性があります。
VATの基本原則は、企業が購入時に支払ったVATを回収し、販売に対してVATを課すことができるということです。出品者が税務当局にVATを支払う間、最終消費者は購入価格の一部としてVATを支払います。VATが登録されている場合にのみ、購入時に支払ったVATを回収し、販売に対してVATを請求することができます。
それぞれのヨーロッパの国でVAT番号を持つ販売パートナーは、VATの請求書が必要な場合、請求書にVAT率と顧客への番号を含め、請求されたVATを表示する必要があります。このようにして、顧客は購入した商品に支払うべきVATの額を知ることができます。
適用される実際のVAT税率は、ヨーロッパ諸国間(標準税率は少なくとも15%である必要があります)および特定の種類の製品間で異なります。さらに、特定のヨーロッパ諸国は、特定の製品について他の料金を保持しています。
EU加盟国全体のVAT率 | ||
加盟国 | コード | 標準料金 |
ドイツ | DE | 19% |
フランス | FR | 20% |
イタリア | ー | 22% |
スペイン | ES | 21% |
ポーランド | PL | 23% |
チェコ共和国 | CZ | 21% |
オランダ | NL | 21% |
標準VAT率は、ヨーロッパ諸国がすべての非免除商品およびサービスに適用する税率です。15%未満にすることはできませんが、最大値はありません。
-VAT申告とは-
すべてのVAT登録者は、関連する期間ごとにVAT申告書を提出する義務があります。VAT申告とは、税務当局にレポートを作成して提出し、関連する期間の取引に関する情報を提供し、支払う予定のVATの金額を税務当局に提供するプロセスです。VAT申告書には、顧客から収集されたVAT、サプライヤーに支払われたVAT、国境を越えた販売、国境を越えた取得、輸出入に関する情報が含まれます。
-輸入VATとは-
輸入VATは、支払われるべき関税に加えて、ヨーロッパ以外からヨーロッパの国への同じ商品の輸入に対しても支払われる場合があります。これは、商品の関税額と該当する関税に基づいて計算されます。輸入VATは通常、商品が税関当局に申告され、商品の「所有者」である国でVATに登録されている場合、VAT申告書を介して回収できます。
ヨーロッパのAmazonマーケットプレイスでは出品用アカウントを統一しており、出品者は、以下のいずれかの出品用アカウントで、どのウェブサイトの出品商品の情報も作成、管理できます: Amazon.co.uk、Amazon.fr、Amazon.de、Amazon.it、Amazon.es。つまり、出品商品や出品場所の管理、ヨーロッパでのビジネス運営を
1つの出品用アカウントで行うことになります。
Amazonヨーロッパマーケットプレイスのいずれかに出品登録すると、出品用アカウントは自動的に他のすべてのAmazonヨーロッパマーケットプレイスに出品できるようになります。注文はすべて1か所で管理されるので、例えばイタリアに出品するのは最初に登録したマーケットプレイスに出品するのと変わらないと感じることでしょう。 しかし、出品する国で適用されているAmazonの出品規約を遵守する必要があります。出品規約は、Amazonの購入者がショッピングを楽しみ、出品者の商品を安心して購入できることを保証する基本ルールです。この他、出品者は自国およびヨーロッパの税制と規制に注意を払うことが必要で、適用される要件を必ず遵守する責任があります。ヨーロッパのいずれかのAmazonマーケットプレイスで販売する場合は、販売時にAmazonに支払う必要のある商品あたりの手数料が国ごとに異なることにも注意しておかないといけません。
ヨーロッパの複数のAmazonマーケットプレイスに出品するには、出品する各マーケットプレイスに商品情報を登録する必要があります。ヨーロッパのマーケットプレイスで一度商品情報を登録すれば、その情報が他のヨーロッパのマーケットプレイスに自動転記されるわけではありません。出品する各マーケットプレイスに出品情報を登録しなければなりません。
Amazonヨーロッパの出品用アカウントを登録する際は、Amazonがサポートしている国々のいずれかにある銀行口座を入力する必要があります。現在、Amazonではイギリスと米国の銀行口座、およびユーロ圏諸国の銀行口座をサポートしています。
3.各ファイルテンプレート
出品する各マーケットプレイスに出品情報を登録する場合、個別のテンプレートを使用します。酷似していますが各マーケットプレイスにより使用言語が異なりますので、記入データの取り違いなどないよう十分注意が必要です。
在庫ファイル、ブラウズノードリストなど各マーケットプレイスで一括商品登録ができるよう日本語、英語、中国語のテンプレートが用意されています。出品方法については、各マーケットプレイス、同じです。
コロナ禍、ウクライナ侵攻が収まったころには、世界的に物の動きが激しくなり、グローバル販売の需要が高まるものと思います。いろいろ学習し知識を高めておく時かも知れません。
JECCICA特別講師 松橋 正一
EC得意分野/モールEC構築、amazon出品支援
楽天、ヤフー、amazon、自社サイトなどECサイトの運営経験を基に、数々のショップを構築サポート。大規模ECサイトの効率的な構築、データ処理システム構築を得意とする。