2022年 年頭所感 本谷知彦
新年あけましておめでとうございます。
当協会に携わられている全ての方々に新年のご挨拶を申し上げます。
楽天が1997年にECモールを開設して本年が25年目の節目にあたります。この年を日本におけるEC元年とすれば、日本でECがスタートして四半世紀が経過したことになります。私は縁があって大手シンクタンクにて長年EC市場の調査・コンサルティングの仕事に携わり、EC市場の成長の過程を見続けてまいりました。25年前、はじめて楽天市場のECモールをネットスケープのブラウザで見たとき、強い衝撃を受けると同時に世の中でどれだけこのようなサービスが受け入れられるのだろうか?と感じたことを、今でも鮮明に覚えております。同社は良い意味で予想を裏切る活躍を見せ、当初の目標であるGMV1兆円をはるかにしのぐ目覚ましい成長を遂げました。タイムマシンに乗って25年前に戻り、周囲の人々に今の日本の状況を伝えたら、どれだけの人々がそのことを信じるのか、やってみたいものです。
今や日本のEC市場は12兆円を超えました(経済産業省のEC市場調査に基づく物販系BtoC-ECの市場規模)。ところが諸外国と比較すればEC化率は8%とその差は大きく、まだ成長の余力を残しているという方もいらっしゃいます。しかしながら、日本は諸外国とは異なり、実店舗網が生活圏に張り巡らされ、物流インフラが整備され、人材は高度に教育され、接客も丁寧であり、もちろん商品に対しても高い信用がおける比類なき特異な性格を帯びた国であります。したがって、諸外国とのEC化率の差をもってEC市場の成長に余力があるとの見方は早計であると私は考えております。そのような特徴を踏まえれば、日本には日本なりのECを含めたリテール市場の発展の仕方があるとは考えられないでしょうか? そのように強く感じて日々EC市場、リテール市場をリサーチしております。
リサーチを通じて感じていることですが、新型コロナウイルス感染症の拡大による消費者の行動変容によって、実店舗とECの垣根が2~3年前の予想よりもはやいスピードで取り払われてきている印象を受けます。換言すれば、実店舗の存在意義や役割を、企業様方が相当熟考されていらっしゃる結果なのだと推察いたします。その様子は、各種メディアや決算発表資料を通じて強く伝わってまいります。2022年も引き続きウィズコロナの状況が続くと予想されていますので、コロナ禍3年目を過ごすにあたり、さらにその熟考度が高まることでしょう。とすれば、これまで以上の変化がECを含めたリテール市場に起こるのではないでしょうか?そして、あらたな変化によって、従来の延長線上にはない「流通構造の新たな最適化」を模索する重要な年になると私は確信しています。
そう考えると、足元の話になりますがJECCICAが果たすべき役割も、今まで以上に重要になってくると予想いたします。JECCICAは日本のEC業界発展のために高い理想をもって活動している団体でございます。客員講師としての私は新米ではありますが、長年EC市場の調査・コンサルティングに携わった経験をもとに、皆様に半歩先、一歩先、三歩先の情報を届けることができればと考えております。そのためには、日々の情報収集とその内容に基づく有益な示唆が重要となってまいります。皆様が「輝かしい1年であった」と年末に振り返ることができますよう努めてまいります。何卒よろしくお願い申し上げます。
JECCICA客員講師 本谷 知彦
株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役