ターゲットのチャレンジ
ウォルマートの直近四半期のアメリカでの売上高は前年同期比5.1パーセント増と好調である。ウォルマートは予算を重視する消費者層を強みとすることに加え、近年、高所得層の顧客層も獲得していると言う。また、グローバルにおけるEコマースも好調で、27パーセント増となった。この素晴らしい業績は、独自の生成AIプラットフォームを活用したよりパーソナライズされた顧客体験の提供やカスタマーサポートの向上などに注力しながらも、在庫の確保、適正価格設定、効率的なサービスといった小売業の基本を着実に実現し続けているところにあると経営陣は説明している。このように好調なウォルマートに対して、もう一つの著名な小売店であるターゲットは売り上げが伸び悩んでいる状態にある。
ターゲットが発表した直近四半期の報告によると、売上高は1.5パーセント減、既存店売上高は3.8パーセント減、営業利益は19パーセント減の9億4800万ドルだった。ターゲットにとって既存店売上高の減少は3四半期連続となる。これは、ターゲットが多様性、公平性、包括性の取り組みを撤回したことを受けて、ボイコット運動が高まったことが要因と考えられているが、デザイン主導のターゲットにとって、デザインを重視する家庭用家具およびアパレルの売上が伸び悩んでいることもその一因にある。
ただ、その一方で、人気歌手の新アルバムのリリースや人気の高いネットフリックスシリーズとのコラボレーションなどの成功により、年初から続いていた客足の月次減少傾向を反転させることができ、明るい兆しも見えてきている。新学期シーズンのピークである9月の来店客数は前年比5パーセントの減少だったが、10月の来店客数は1パーセント増加した。さらにホリデーシーズンに向けて、ブラックフライデーの早期セールの実施、一部製品の大幅割引、新商品の投入、ターゲット限定トレーディングカードの販売やターゲット内のスターバックス店舗でのみ販売するスターバックス限定ドリンクといった他社との積極的なコラボレーションなど、売上回復に向けて積極的に投資している。
注目されているのが、よりよい顧客体験の向上を目指し、OpenAIとのパートナーシップをつい最近発表した。まず、最適な商品を届けるため、生成AIを活用したギフト検索機能をオンラインとアプリで導入。次に、ChatGPTを利用し、アプリ初となる会話型キュレーション体験も提供する予定で、ホリデーショッピングシーズンにちょうど間に合うタイミングで実現する予定でいる。最近のある調査によると、Z世代の消費者のほぼ半数が、衣類やスキンケアから日用品まで、購入するものを選ぶ際にAIを頼りにすると回答しており、AIが人々の買い物や新しいアイデアの発見方法をいかに急速に変えつつあるかわかる。
ChatGPTとの連携に関する一例として、次のようなことが可能となる。
• ChatGPTインターフェースで、ゲストはターゲットをタグ付けし、”ホリデーシーズンの家族映画ナイトの計画”についてサポートを求める。
• ChatGPTのターゲットアプリは、ブランケットやキャンドルから、新しいスナックや暖かいスリッパまで、ターゲットのスタイルを重視した、心地よくシックな冬物商品の中からおすすめ商品を提案する。
• ゲストは商品を閲覧し、複数の商品をバスケットに入れ、ドライブスルーでのピックアップや店舗での受け取り、配送など、希望する配送オプションを選択。これでシームレスな購入が完了。

OpenAIとの提携は顧客エクスペリエンスの向上のみならず、チームメンバーやベンダーパートナーなどビジネス全体へも展開する。ターゲットの各チームは、小売業者独自のデータと連携するように設計されたChatGPT Enterpriseを使用して、スピードアップ、ワークフローの簡素化、サプライチェーン予測の改善、店舗プロセスの簡素化、デジタル体験のパーソナライズまで、AIを活用して全社的な業務強化を図る。ターゲットでは、AIを活用するだけでなく、AIを基盤とした企業運営により、ウォールマートへのチャレンジを続ける。

JECCICA客員講師 渡辺泰宏
カリフォルニア在中チーフエグゼキュティブ、戦略ビジネスコンサルタント。日米の顧客に対し、新規ビシネス戦略立案および解約、新規パートナー開拓、コーポレートマーケティング、オンライン、ソーシャルメディア、モバイルマーケティングの戦略立案、EC市場動向分析及び商会等の戦略的コンサルティング。