JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

最新セミナー・イベント情報
お申込みはこちら

値上げしないワークマンが強気な理由

主力のPB300商品は値上げしません
円安や原材料費の高騰によって、企業が値上げをしています。その一方で、「ワークマン」は主力となっているPB商品の上位300商品に関して「値上げをしない」と宣言しました。「痩せ我慢」などという言い方をしていますが、彼らは疲弊しなくて済むような備えをしています。僕らはそこに注目しなければなりません。

彼らにおいては周知の通り、機能性を背景に成長しました。作業着ブランドとして長年培ってきたノウハウが、アウトドアにいかされました。だから「#ワークマン女子」の店舗は拡大の一途を辿り、最近では、ショッピングセンター、百貨店などにも入店するようになっています。確かに、機能性と安さを売りにしているけれど、単純な大量生産、大量消費を意図しているのではありません。

機能性を活かして値下げを防ぐカラクリ
「機能性」を活かして、値上げを防いでいるのです。この点に関して深掘りすると「機能性」に絡んで、独自素材開発に注力しています。例えば、何気ないダウンジャケットにしても、保温性と吸湿発熱綿で体を温める独自素材を使っているのです。これは作業着の時代から変わりません。ワークマンは独自開発でその素材を開発し、商品への落とし込みで強みを発揮してきました。つまりここに投資をしているのです。

だから、彼らは、ジャンルを拡大するほど、それらの独自素材を横展開していくわけです。商品への落とし込みはお家芸ですから、力を発揮しやすい。いうまでもなく、ジャンルを拡大するほどに使われる素材の量が増えます。だから、結果的に素材のコストが抑えられて、全体の粗利が増えます。

値上げしない理由
例えば、FUWATECHという独自開発素材。こちらは、12アイテムで展開していることを明かしてくれました。実際、彼ら曰く、それによりその素材の生産数は2倍となり、素材のコストは2割削減できました。しかも、多くの素材は実際に、お客様から比較的反響が得られたものを土台に、それを派生しているから無駄がありません。

その際たるものが最近、彼らが進出した「キャンプギア」ジャンルだと思います。「キャンプギア」のメイン商品としてまず浮かぶのが「テント」でしょう。ここにもそういう素材に関しての工夫があります。なぜなら、作業着などで培った防虫などの付加価値は、キャンプギアのテントと親和性が高い。そもそもキャンプギアのマーケットは存在しています。しかし、彼らは敢えて既存のファンは触発しません。意図したのはキャンプに不慣れな初心者。

キャンプギアに40億円市場を生み出した
不思議な話ですが「キャンプでありながら、キャンプではない環境」を初心者に価格を抑えて提供して、新しいマーケットを開拓しました。それで、話が戻りますが、そのテントの面積は作業着や洋服の比ではありません。当然、その素材を使う量が増えますから、素材あたりの単価が減少しているわけです。

繰り返しますが、その初心者という対象と値頃感はばっちり合致して、受け入れられます。その結果、彼らは0から始めて40億円の市場を作りました。ちなみに4900円(税込)で提案したテントは、それだけで40,000点、販売しました。

だから、機能性は彼らにとっての武器です。独自に開発した素材によって他にはできない価値を実現しています。そこを強みに、ジャンルを広げるから、それ自体のコストが下がり、売れるほど、他の事業を助けて、粗利を向上させます。

いうなれば、彼らの数多くの独自素材をプラットフォームのようにして、その上に商品を成り立たせる手法です。こういう取り組みの集積が「値上げはしない」という形で、お客様に還元していくことにつながっているわけです。

機能性の上に新ジャンルを作る
これは、未来の戦略にも直結しています。ワークマンシューズというブランドも立ち上げました。正直に言えば、そのパンプスにしても見た目が良くありません。でも、売れている理由は、その履きやすさです。

それを裏付けているのは、作業着です。靴べらなしに脱ぎ履きできて、すぐに駆け足で走れるような機能性を持った靴を手がけていたからです。それらをパンプスの要素に取り入れれば、女性の間で、今までにない履き心地とファンが広がるわけです。

これらを「#ワークマン女子」と併設して、洋服を買いに来た人に自然に手にとってもらおうとしています。ここがみそです。彼らの機能性は実感が全てですから。さらには、最近、ネットで購入を促しながらも、店舗受け取りを推奨して、配送費を抑えています。

でも、それも配送費だけの問題ではないのです。店で商品を受け取る合間に見かける、それらの新ジャンルの商品を実際に手にとってもらうため。新しい価値を実感してもらうきっかけを店で作ろうとしています。

だから、リアル店舗を拡大します。ゴルフ系のグッズなどにも着手すると言いますが考え方は同じです。上記のような好サイクルを軸に生産性を高めて、さらに売上を伸ばす考えなのです。値上げをしない理由と、未来につなげる戦略で、よく練られています。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


 - JECCICA記事, お知らせ, その他, コラム, ニュース

JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

Copyright© JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会 , 2022 All Rights Reserved.s