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2019年 年頭所感 雨宮雄一

新春を迎え、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

2018年の漢字は「災」が選ばれましたが、改めて、被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。

2018年の経済的には戦後最長の景気拡大が継続し、好況と言える1年でした。
小売業界でも、多くの業種で売上が前年実績を超えており、消費者の消費意欲は底堅かったと見受けられます。
EC業界おいては、全体としては引き続き成長基調です。総務省の家計消費状況調査(2018年10月)によれば、
インターネットを利用した支出額(ひと月の平均、1人当たり)が1万円を超え、前年比125%程度の高い伸びを示しています。
一方、宅配便のコスト上昇が多くのEC企業を苦しめたものと思います。2018年も2017年と同様、売上はそれなりに好調なのだが、
利益的には厳しかったというような年だったのではないでしょうか。

私は、引き続ぎ小売・EC関連のM&Aに携わって来ましたが、2019年にも通じるテーマとしては3つ挙げてみたいと思います。

1つ目は、この数年毎年触れている事業承継です。
後継者不在という理由から会社・事業の売却を検討される高齢の経営者(株主)は引き続き多いのですが、今年目立ったのが、
40歳代の経営者が事業拡大のために持ち株を売却して、その後も売却した会社の経営に携わる、というケースです。
業績はソコソコ好調なのだが自社単独での成長に限界を感じ、大手企業の傘下で新たなリソース(人、カネ、技術・サービス)を
活用してもっと拡大したい、というタイプの事業承継です。
ECショップのみならず、EC・WEB関連の受託開発企業の事例もありました。本当にM&Aが一般化してきたと思います。

2つ目は、これも昨年も挙げたのですが、人材不足を解消、あるいはアウトソースしていた機能を内製化するためのM&Aです。
ECショップ(大手企業)による内製化目的のM&Aのみならず、今年目立ったのは、EC関連サービスを展開する企業による
サービスラインナップ拡充目的のM&Aです。
CRMシステムのエイジアが、EC運営ノウハウを取得するためにベビー服サイトの運営企業を買収した案件は、なるほどなぁと
感心しました。
もちろん、自社で人材を採用し様々な経験でノウハウを蓄積、ということは諦めてはいけませんが、このように時間を買うM&Aは有効です。

3つ目は、EC業界内での再編です。
まずは食品EC分野なのですが、私が衝撃を受けたのは、コンビニ業界が一手にECから手を引いた/力を抜いたことです。
ローソンはネットスーパーを止め、ファミマもドットコムを閉じ、セブンもオムニセブンのソフトウエア資産を大幅減損しました。
ビジネスモデルを確立できなかったのだと思われます。
このように、世の流れとして「ECやらなきゃ」と取り組んでみたものの計画通りの成果がでずに撤退、というケースも増えるでしょう。
一方、食品ECのトップ企業であるオイシックスが、同業である大地を守る会との経営統合に続き、らでぃっしゅぼーやも
傘下に収め、この数年で事業規模が3倍になりました。amazon対抗軸の組成が目的だと思われます。
食品EC以外でも、特定分野においてはamazon対抗軸のM&Aという流れが起きるかも知れません。
話は変わって、オンライン旅行業界で成長著しいエボラブルアジア/アドベンチャーの両社が、システム開発力とネット販促ノウハウを武器に
ものすごい勢いで異業種M&Aを仕掛けています。もちろん、商材によって商売のあり方は異なりますが、EC機能という視点で見れば
同様の部分もあり、共通ノウハウの活用による異業種M&Aもひとつの流れになりそうです。

EC業界においては、M&Aは戦略的選択肢として有効に活用されて来ており、この傾向は今後も続くでしょう。

以下は、毎年唱えている呪文ですが、、、

このような時代だからこそ、いつでも自社が買収側に回れる、ないしは、売却することが出来るよう、「基本を磨く」ことと
「進化をする」ことに邁進しなければなりません。また、ショップを支えるサービス提供者側は、ショップの「本質的課題」を
解決する一手を提案する必要があります。

JECCIAとしては、「基本」を大切にしながらも「進化」出来るEコマース人材を育成していくべく、引き続き努力していく所存です。

最後になりましたが、皆様方におかれましては、この一年が希望に満ちた躍進の年になりますよう心からお祈り申し上げ、
年頭のご挨拶とさせていただきます。

雨宮雄一プロフィール写真

専務理事 雨宮雄一

フォーセンス・パートナーズ(株)代表取締役
パートナー 公認会計士
元HMVジャパン代表取締役社長
元ローソンHMVエンタテイメント取締役
大手監査法人・外資系コンサルティングファームを経て2006年、経営コンサルティング会社 フォーセンス・パートナーズ設立。現場まで入り込み指導するハンズオン型サービスをモットーに、多数の大手流通企業の経営改革を支援。

2008年から3年間、HMVジャパン(現ローソンHMVエンタテイメント)の代表取締役社長を務め、同社の Eコマースシフトを主導。また、ローソンHMVエンタテイメントでは取締役としてEC・CRM・IT部門を統括。

ネットとリアルを融合させた大規模ECの運営に精通。加えて、EC事業のM&Aにも当事者・アドバイザーとして多数関与。EC領域では戦略から運営まで一貫してアドバイス出来る数少ないコンサルタント。

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