モバイルウォレット決済
J.D.パワーがアメリカ全国の小売銀行顧客約3,600社を対象とした決済に関する調査レポートによりますと、過去3ヶ月以内のある時点で実店舗でモバイルウォレットを使用したことがあると回答したアメリカ人の割合は、2021年第1四半期が38パーセントであったのに対し、2022年第3四半期では49パーセントと11ポイント増加しています。また、モバイルウォレットについて聞いたことはあるが設定したことはないと答えた人の割合は37パーセントから24パーセントに減少、セキュリティに懸念があると答えた人の割合も25パーセントから21パーセントに減少しました。日本ではスマートフォンの普及以前からおサイフケータイなるモバイル決済システムのインフラストラクチャーが整備されていましたが、ようやくアメリカでもこれらのデータからモバイルウォレットの利用者が増えていると思われます。私も以前はモバイルウォレットの利用に躊躇していましたが、一度利用すると、物理的なクレジットカードやデビットカード(ここでは、総称してカードと呼びます)を持ち運ぶ必要のない利便性に加えて、生体認証およびカード番号とは異なるトークン方式での決済によるセキュリティ面での安心感もあり、とても便利に感じています。
ただしその一方で、スマートフォンの普及が直接モバイルウォレットの自動的な導入には完全に反映されていないようで、モバイルウォレットを使用しないことのない消費者もまだ半数おります。ここで考えられる潜在的な理由として、スマートフォンの電池切れへの心配や使い勝手もありますが、扱いやすい非接触型カードの普及も一因のようです。2022年10月、決済ネットワークのVisaは四半期決算報告で、非接触型カードがアメリカにおける取引の28パーセントを占め、2022年初の20パーセントから増加したと発表しています。
ところで、Eコマースで商品を購入したり、レストランから食事を注文する際は、カード決済がその主たる決済方法ですが、一口にカード決済と言っても、その場でカード情報を入力、アプリに保存されているカード情報の再利用、そしてApple Payなどのモバイルウォレットの利用など数種類あります。モバイルエンゲージメントプラットフォームのVibesとIndustry Diveが、昨年11月と12月にモバイル利用を中心とする消費者約1,000名を対象に行った調査によりますと、重要なトレンドの1つとしてモバイルアプリに接続されたモバイルウォレットの使用が増加したということでした。確かに私の経験上でも、全国的にチェーン展開するショップのモバイルアプリを中心に、モバイルウォレットで決済できるアプリが増えたように感じます。若い世代を中心にモバイルコマースが普及しており、モバイルアプリやウェブショップと連携したモバイルウォレット決済の利便性は高いことから、ぜひともモバイルウォレット決済との連携がさらに普及することを期待します。
JECCICA客員講師 渡辺泰宏
カリフォルニア在中チーフエグゼキュティブ、戦略ビジネスコンサルタント。日米の顧客に対し、新規ビシネス戦略立案および解約、新規パートナー開拓、コーポレートマーケティング、オンライン、ソーシャルメディア、モバイルマーケティングの戦略立案、EC市場動向分析及び商会等の戦略的コンサルティング。