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ハラカド、リアル商業施設「変貌」の曲がり角

掘り起こす銭湯の価値
デジタルの浸透の影響なのでしょうか。東急プラザ原宿 「ハラカド」に行って、感じたのはリアル商業施設の考え方の変貌。同所は4月17日にオープンしたばかりで、(原稿の執筆時点では未開店)そのプレス内覧会に、僕は訪問したのです。

「提供するべきは、必ずしも売り場ではない」と思わせるもの。例えば地下一階には、銭湯「チカイチ」があります。原宿の真ん中で銭湯とは驚きです。高円寺で銭湯を営む「小杉湯」の新事業で、それが自らの課題解決を兼ねていて、銭湯文化に新風を起こします。

「チカイチ」はスーパー銭湯として認可を受けているのに、東京都の公衆浴場の料金に合わせて520円。インバウンド相手ではなく、近くの人たちに毎日通ってもらう。銭湯として新しい価値を掘り起こせないかと奮闘しているのがそれでわかります。

小杉湯の話によれば、財務体質に課題があります。例えば、建物が古く毎年、多くの修繕費を必要としています。だから、流行の最先端の地で新たな銭湯の事業を見出し、高円寺とは違ったスキームで、銭湯の未来を模索していこうとしているわけです。

大手ブランドが銭湯に意味を感じる理由
興味深いのは、そこに価値を感じているのが、大手ブランド。アンダーアーマーや花王などが参画しています。個人的な意見ですが、D2Cなどが台頭しているだけに、大手メーカーも、お客様と直接繋がれる機会をつくりたいのだと思います。

アンダーアーマーの野田佳宏さんに聞きましたが、同ブランドは最近、有明などの実店舗を活用し、コミュニティ形成を行っていると言います。要するに、実店舗の価値を活かして、開店前に集まってもらい、そこでストレッチなどを行って、人と人との交流を育みます。それを行う狙いは、ブランドの着用率を上げたいからだそうです。

着用率が低ければ、価格などで他のブランドと比較されて、彼らの伝えたい商品のメッセージが伝えきれずに購入されてしまいます。だから、同じ趣味の人とともに汗を流す機会を作り、着用率を上げて、彼らのメッセージを届けていく。だから、「毎日通う」銭湯で、新たなビジネスの可能性が見出せないかと考える小杉湯と親和性があるわけです。そこに場所を用意し、着用率を上げれば、ウィンウィンです。

共創の拠点としての使い道
「ハラカド」の上の階に行ってもそうした“共創”の意味合いが強いです。例えばメーカー「カンロ」のスペースがあります。一階こそ商品の売り場ですが、三階は小さなスタジオ。彼らはそこで「ヒトツブカンロ」の可能性に言及しました。10年前発売された商品でありながら、近年になって大ブレイクし、品薄になっている商品です。

理由は、「ASMR」という噛む時の咀嚼音がYouTubeで話題となったからで、オンラインストアでは完売状態。これは想定外でした。だから、改めて、スタジオをつくり、新しい可能性を模索しています。そこには耳の形をしたマイクがあるので、そこに向かって、同商品を食べます。すると渡されたヘッドホンから、バリッという噛む音が流れ、確かにこれが心地よい。だから、体験をリアルに感じて、第二の拡散となっていきます。

新興勢力も増えています。ネット系の店舗「THREE TREASURES」は、靴屋なのにどれも奇抜です。その理由は彼らの言葉でわかります。「ファッションデザイナーがショーで手掛ける衣装は斬新です。だから、自分たちは靴の専門家としてどうやってそれを靴に落とし込み、靴で表現するか。その部分で差別化して、展開しています」。

デザイナーとのコラボを主体としているから、ノーマルな靴はあまりありません。数を絞り込み、それができるのはネットを起点としているからです。とはいえ、厚底ゆえに重そうだとか、先入観が生まれやすいのも事実。実際は軽いから、それがリアルでの驚きになります。リアルは、エンタメ要素として位置付けています。

出会えない価値をリアルな出会いに
普段、お目にかかれないブランドもあります。例えば、ミュージアムのような内装に魅せられ駆け寄ったら、「TENGA」でした。なぜ、ここにあるのでしょう。

「18禁ではないのに、企業によっては広告すら断られてしまうことがある」。彼らは言います。広告に代わるものとして、リアルが機能するのは、そこに集まる顧客が発信源となるからです。

女性向け商材では、俳優の水原希子さんが開発協力をしていたり、アンダーグラウンドなイメージが薄れています。だから、若年層の多いこの拠点を使い、多様性を重んじるこの時代に、偏見なく、それらをオープンにしていこうとするのです。

新しい商業施設というと有名ブランドが軒を連ねるイメージが先行します。でも、ここは楽しむ場所であり、普段、接することのない企業の側面に触れるために、存在しています。道筋は未知数ですが、リアルが「既存のやり方」では通用しなくなっている証でもあるのでしょう。デジタル系はそんな空気を読みながら、リアルとの連携を模索することで、伸び代があるのではないでしょうか。
今日はこの辺で。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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