楽しく誰にも分かるマーケティング:Vol㊸ コロナの影響で浮き彫りになる理想的な熟年夫婦の形とは
コロナ禍で変化したライフスタイル
新型コロナウイルスは、ワクチン接種と感染予防の効果もあってか、ここ最近は感染者数が減っていますが、まだまだコロナとの共存「Withコロナ」時代は続きそうな気配です。
コロナ禍と言われて既に約1年半が経過し、私たちのライフスタイルも大きく変化しました。
こうした状況の中、テレワーク推奨による在宅勤務で、普段より夫婦が家で一緒に過ごす時間が多くなり、そのストレスや収入の減少などから口論となり離婚に至ることを「コロナ離婚」と言っています。新型コロナウイルスは、夫婦の関係にまで影響を与えているんですね。
熟年夫婦にとって配偶者の存在とは?
昨年1月に、(一社)日本元気シニア総研で私が企画実施した、首都圏在住の男女500名のABS世代アンケートで、夫婦をテーマに質問を2つしました。
一つ目は、配偶者が今の自分自身にとって、プラスなのかマイナスなのかという比率を尋ねました。そして二つ目は、60歳を過ぎたいわゆる熟年夫婦の理想的関係についてです。
先ずは配偶者に対するプラスマイナスの比率について、夫は妻の存在を「プラス67%、マイナス33%」、妻は夫の存在を「プラス60%、マイナス40%」と感じており、女性の方がやや否定的ではあるものの、全体ではプラスの傾向でした。
面白いのはその内容です。夫は妻に対して、プラス面は「長年連れ添った安心感」やリスペクトする言葉が多いのに対し、妻から夫に対しては、「安心感・頼れる」といった評価が大半であるものの、「プラス面は特にない」という回答が、男性より多く目立ちました。一方でマイナス面は、夫から妻へ「文句が多い、細かいことにうるさい」、妻から夫へ「頑固や面倒、気遣いの無さ」など、双方が感情的な要素を挙げているのがわかります。
この中身から見えてくるのは、夫も妻も「相手に対する配慮の足りなさ」が長年の不満として積み重なり、大きなマイナス面として表出していると言えます。
熟年夫婦にとって理想的な夫婦像とは?
二つ目の、60歳を過ぎた熟年夫婦の理想的関係では、「夫婦仲よく連れ添う」を選んだのは、夫39%、妻23%。「お互いに自立した関係」を選んだのは夫59%、妻72%でした。
基本はお互いを干渉したり相手に依存したりしない。それぞれ気持ちは自立し、時々夫婦の時間を一緒に過ごしたり、親や子供のことで助け合ったりするという、「夫婦は基本自立している関係」を望む人が、夫より妻側に多く見られました。
やはり夫婦であっても基本は他人。お互いの性格や価値観、得意、不得意があるのは当然ですし、そのために役割も異なります。
熟年夫婦の自立と生きがい、健康寿命の関係
ABS世代になると、結婚生活は長い方が大半ですが、コロナ離婚もさることながら「熟年離婚」に至らないためには、大きく2つのポイントがあると思います。
先ずは、「本当の意味で、相手を思いやる」ということ。今、パートナーが一番欲しいものは何か、すぐに答えられますか?それは「ありがとう」という感謝の言葉かもしれないし、「1人の時間」かもしれないし、あるいは「旅行のお誘い」かもしれません。
そして「自立」です。今回のコロナの件のように、何か問題に直面した時は力を合わせますが、基本はあまり依存、干渉せず、それぞれの生きがいを持つことで、社会の一員であるという自覚が生まれ、魅力的に歳を重ねていけるでしょう。
私が思う人間の生きがいとは、社会的なコミュニティに帰属し、そこで大切な人を笑顔にさせることで自分自身の承認欲求を満たし、やがてオンリーワンの自分らしさを実感することだと思います。つまりキーワードは「コミュニティ・承認欲求・自分らしさ」です。
SNSがこれほど浸透し、人から「イイね!」をもらいたいのは、まさにこのキーワードに当てはまります。熟年夫婦も一人の人間として、社会との関わりを持つことは、健康寿命の延伸にも寄与します。
熟年夫婦の自立をソリューションするサービスを!
これまでアナログ世代のシニアマーケットは、インターネットのコミュニケーションはなかなか浸透しませんでしたが、スマートフォン普及率は2021年1月時点で、「60代80%(2018年は52%)」、「70代62%(2018年は26%)」(モバイル社会研究所調べ)となっており、また今年3月に私が中部5県在住の男女1,000人にアンケート調査を実施したところ、インターネット通販は54%の人が利用していました。
こうした時代の変化から、今後は熟年夫婦の自立を促すため、「コミュニティ・承認欲求・自分らしさ」が見つかるECサービスに受容性が期待出来ると感じています。
年齢を重ねた人間が再び自立することは、やがて連れ合いに先立たれた時も孤立しない結果につながり、お互いの人生がよりハッピーになると考えます。
夫婦が長続きする秘訣だって?それは、一緒にいる時間をなるべく少なくすることさ!(by ポール・ニューマン)
JECCICA客員講師 鈴木 準
株式会社ジェイ・ビーム マーケティングコンサルタント