パンデミック時におけるEコマースの躍進
新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、人と人との社会的距離を保つことが重視されています。
そのため、グローサリーストアなどでは店内に入店できる人数を制限しており、外では入店待ちの長蛇の列が見られます。また、接触レスが望まれることから、決済方法も現金やカード決済からApple Payのような非接触モバイル決済、およびオンラインでの決済が好まれます。
このような状況では、やはりEコマースへの依存が高まり、事実、2020年3月以降Eコマースの利用が急増していることが各社のレポートから読み取れます。
US Census Bureau Newsのデータによりますと、イメージ 1のグラフにあるとおり、2020年第2四半期は小売全体が減少しているのにもかかわらず、Eコマースは対前四半期比約32パーセント増の2,115.1億ドルとなっています。また、小売全体に対する売上比率も過去11パーセント前後で推移していた値が、16.1パーセントと増加しています。
また、各四半期の対前期比および対前年比を見てみますと、イメージ 2の表のとおり、2020年第2四半期は小売全体で対前期比、対前年比ともにマイナス成長となっている中、Eコマースは対前期比 31.8パーセント増、対前年比44.5パーセント増と大幅に増加しています。
期 | 増減率 (前期比) | 増減率 (前年比) | ||
小売全体 | Eコマース | 小売全体 | Eコマース | |
2020年2Q | -3.90% | 31.80% | -3.60% | 44.50% |
2020年1Q | -1.20% | 2.40% | 2.10% | 14.80% |
2019年4Q | 0.50% | 2.20% | 3.90% | 16.60% |
2019年3Q | 1.10% | 4.70% | 3.90% | 17.30% |
2019年2Q | 1.80% | 4.80% | 3.20% | 13.80% |
次に、Adobe Digital Economy Reportによりますと、Eコマースの4月以降の月別売上および対前年比のデータは次のようになっております。
– 4月: 702億ドル、対前年比49%増
– 5月: 825億ドル、対前年比78%増
– 6月: 732億ドル、対前年比76%増
– 7月: 663億ドル、対前年比55%増
例年、Eコマースを始めとする小売の売上は、11月、12月のホリデーシーズンで大きく増加しますが、今年の4月と5月の売上合計は1,527億ドルで、昨年のホリデーシーズン2ヶ月間の売上の1,425億ドルを上回っています。ちなみに、6月以降若干減少しているのは、業務再開に伴い消費者が店舗での買物に少しずつ戻ったことと、雇用レベルの低下および失業保険手当削減による支出レベルの低下が影響しているものと思われます。
最後に、パンデミック時における小売各社のEコマース売上データは次のとおりで、Eコマースは各社の売上に大きく貢献しています。
– Walmart: 54億ドル、対前年比97パーセント増 (2020年7月31日に閉じた第2四半期決算)
– Amazon: 889億ドル、対前年比40パーセント増 (2020年6月30日に閉じた第2四半期決算)
* 食料品は対前年比160パーセント増
– Kroger : 92パーセント増 (2020年5月23日に閉じた第1四半期決算)
JECCICA客員講師 渡辺泰宏
カリフォルニア在中チーフエグゼキュティブ、戦略ビジネスコンサルタント。日米の顧客に対し、新規ビシネス戦略立案および解約、新規パートナー開拓、コーポレートマーケティング、オンライン、ソーシャルメディア、モバイルマーケティングの戦略立案、EC市場動向分析及び商会等の戦略的コンサルティング。