宅配便総数から2024年のEC市場規模の伸びを予想
宅配便大手3社による取り扱い個数実績の公開
宅配便を手掛けるヤマト運輸、佐川急便、日本郵便はそれぞれ宅配便の取り扱い個数実績をWebサイトで毎月公開しています。私はライフワークのように各社から発表されるデータを毎月入手しており、その都度行う集計作業を楽しみにしています。ちなみに集計対象ですが、ヤマト運輸は宅急便・宅急便コンパクト・EAZY・ネコポス、佐川急便は飛脚便、日本郵便はゆうパックとしています。タイミング的にちょうど2023年の各月のデータが出そろいましたので、今回のコラムは2023年を含む直近の年単位での取り扱い個数の推移について触れたいと思います。尚、ヤマト運輸は1個単位でのデータを公開していますが、佐川急便は百万個単位、日本郵便は千個単位でのデータ公開となっている点、あらかじめご了承ください。
23年の実績値は46.3億個
まず2023年の年間総数ですが、ヤマト運輸は23億577万個、佐川急便は13億28百万個、日本郵便は9億9,585万7千個となっています。3社合計での2023年の総数は46億30百万個(十万の位を四捨五入)となります。各社のシェアを計算してみると、ヤマト運輸が49.8%と約半分、佐川急便が28.7%、日本郵便が21.5%です。尚、この数値はECで購入された商品に関する個数ではなく、EC以外での宅配便も含まれます。
ECでの宅配便取り扱い個数を正確に把握する手段を私は知らない(おそらく無い)のですが、国土交通省発表の調査よると、楽天市場が開設された1997年度の総数は16億16千万個となっています。つまりECが始まる前に既に宅配便取り扱い総数は16億個以上存在していたわけです。現在のEC以外での総数を約20億個と仮定すれば、2023年のECでの総数は約26億個という計算になります。
23年のECでの宅配便取り扱い総数は少なくとも30億個以上
ECでの26億個という数値はあくまでも大手3社によるものです。実際にはそれ以外の事業者の宅配便もあるでしょう。それと理解しておかなければならない重要な点として自社配送分の存在があります。正確な数値を私は存じ上げておりませんがAmazonでは自社配送分が既に過半数を超えているという情報を耳にしたことがあります。ヨドバシ、ニトリなども自社配送の態勢が整備されています。自社配送に関する数値について正確に把握できる手段はおそらくないと思うのですが、少なく見積もっても2023年は確実に5億個以上あるのではないかと私は見ています。
したがって、2023年のECでの宅配便取り扱いの総数は少なくとも30億個以上あると予想されます。2023年のEC市場規模は推定で14兆円半ばあたりだと思いますので、1個あたりの平均単価は4千円台後半といったあたりでしょうか。
23年の宅配便取り扱い総数はなんと前年割れ
ここで大手3社合計の総数の経年推移について見てみましょう。2019年は39億96百万個であったところ、2020年はコロナ渦でのEC需要の高まりに伴い44億13百万個に大幅アップしました。その後2021年、2022年とそれぞれ45億90百万個、46億88百万個でした。2023年は46億30百万個ですので、前年比で58百万個のマイナスという驚きの結果になりました。月別で見てみると前年同月比でプラスであった月は5月、6月、10月の3カ月のみ。その他の月はすべて前年同月比マイナスでした。EC以外の用途に大きな変動があるとは想定できませんので、宅配便個数の前年割れという事実はECによる影響とみてよいでしょう。
ただし、さすがにEC市場規模が前年比でマイナスということは考えられません。よって自社配送が結構増えたのではと私は見ています。BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)の増加もあるかもしれませんが、BOPISを実施している企業は限られていますし、億単位で増えたわけではないでしょう。
2023年のEC市場規模の伸長率は限定的
自社配送が増えたとはいえ、大手3社の宅配便取り扱い総数が前年比マイナスになっているという事実は、2023年のEC市場規模の伸長率が限定的であることを意味します。コロナが5類に移行し人々の警戒感が薄れたことから消費のリアル回帰が鮮明となっています。もう少しデータが揃えば2023年のEC市場規模を一足早く推計することができるのですが、今のところ実質5%前後のプラスであり、それに加えて物価上昇分が2%程度上乗せされるのではと推測しています。
EC市場規模の状況をリアルタイムで把握することはとても困難ですが、毎月発表される宅配便大手3社のデータをウォッチすることで、大まかな状況を理解することができます。それほど面倒な作業ではありませんので、ご興味がある方は是非チャレンジしていただきたいと思います
宅配便大手3社の取り扱い総数の推移
出所:ヤマトホールディングス、佐川ホールディングス、日本郵便発表のデータを基に作成
JECCICA客員講師 本谷 知彦
株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役