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「伝える」と「伝わる」のあいだに Vol.16 「何で」と「好きで」の突き落とし

みなさんはNHKの朝ドラ「虎に翼」観てますか?日本初の女性弁護士になった三淵嘉子さんをモデルにした物語。ふだん全く朝ドラに縁がない私も今回だけは欠かさず観てます。
掲載される頃には話もかなり進んじゃってると思いますが、これを書いていた時点でこんなシーンがありました。

大学女子部で法律を学び、生き生きと語り合う主人公・寅子と仲間たちを見て、専業主婦である兄嫁の花江が疎外感から涙を流します。それを見た仲間の1人・よねが「自分が好きで選んだことだろ!」と花江を一喝するのです。
「つらくない人間なんていない。(それが)分かってないから甘えて泣いて弱音を吐くんだ。ここにいる誰もが弱音なんて吐かないだろ」と。

「好きで選んだことだろ」…現代でもそこかしこで(特にSNSで)聞くフレーズですが、みなさんはどう感じますか?

★それは、上から相手を黙らせる
私には、失敗したり愚痴ったりした時に相手から投げかけられる「二大嫌いフレーズ」というのがあります。

・「何で○○しなかったの?」
・「自分が(好きで)選んだんでしょ?」

失敗したわー!しんどいわー!と言う相手に「事前に回避できたのでは?」「もっと上手くやればよかったのに」または「自ら選んだことで愚痴るな」って言うメッセージですね。
確かに人にはそういう示唆が必要な時も、それによって気づきを得る場合もあるかもしれない。でもどっちかというと「うまくできないアンタが悪い」「自己責任だよ」ってニュアンスが強くて、何というかイジワルな言葉だなーと思ってます。
SNSでよく見受ける「育児がしんどくて」とこぼす母親に対して「好きで産んだんだよね?」というリプライが多数ぶつけられる様子とか、まさに意地が悪い。

あと「何で○○しなかったの?」は問いかけなので、思わず答えちゃうんですよ。「一応やってみたけど上手くいかなくて」とか。でも大抵の場合、相手も続けます。「じゃあ××すればよかったのに」と。
そんな問答をしてるうちに気づくんですよ。「なんで私この人に言い訳しなきゃいけないの?」
「何で一生懸命プレゼンしてジャッジされてんだ?」って。

●起こってしまったことに対して後出しのアドバイスなら何とでも言えるよね?
●そもそも「どうすれば回避できたか」なんて相談がしたいわけじゃないし!
●好きで選んでも、しんどいことなんて後から山ほど出てくるよ!

など、腹立たしい思いはたくさんわいてきます。
この二つのフレーズって、言った側が勝手に「解決のためのダメ出し係」に就任できて、相手の弱音や感情をせき止め、強制終了することができるんです。「それはあなたの不手際だ。自己責任だ」って。もうそこからは何も進まない会話。

「各々が辛さに耐えて自分の責任をまっとうし頑張る」といえばカッコいいけど、他人を理解することも、思いを分かち合うことも、助け合うこともできないってのは、果たしていいことなんだろうか。
少し前に我が国の首相はやたらと「自助、自助」と言ってましたが、その言霊が大きくなり、今や「公助」がどんどんおろそかな社会になりましたよね。極端な物言いかもしれませんが、この二大フレーズはその象徴のような気がするんです。

★解決させるより大事なこと
さて「虎に翼」ではこのあとどういう展開になったかご存知でしょうか。
主人公・寅子はこう返すのです。

寅子「みんなつらいなら、私はむしろ弱音、吐くべきだと思う」
よね「弱音なんか吐いたところで何も解決しないだろ?」
寅子「うん、しない。でも、受け入れることはできるでしょ?私、皆さんをとりまく問題に何もできない。でもせめて弱音を吐く自分を、その人を、そのまま受け入れることのできる弁護士に、居場所になりたいの」

そう。確かに愚痴や弱音を言っても、その場では何も解決しない。聞いた方だって、解決策を示さなければそのままになる。でも「ただ聞いて、知る」「共感できなかったとしても、そういうことがあると理解する」ことはできるのです。

人間関係には、常にダメ出しやアドバイスが必要なわけではありません。むしろそんなものは不要なことの方が、ずっと多いのです。

弱音を封じ込めて無理やり進んでも、溜め込んだそれは毒となり、いつか自家中毒を起こしたり、他者への攻撃に変換されたりします。そうなる前に誰かに聞いてもらう。誰かのそれは聞いてあげる。解決しようとダメ出ししたり、ジャッジしたりはせず、そのまま受け入れる。傾聴。

何かとしんどく世知辛く、しかもそのしんどさが多種多様な現代社会こそ、傾聴の姿勢がもっと大事になってくると思います。プライベートでも、仕事でも。
それは確かに合理的でも効率的でもない。でもたくさんのものを受け入れやすい土壌からは、必ず何らかの自由な芽が出るんじゃないか。私はそう思います。

JECCICA客員講師

コピーライター 近藤あゆみ

Lamp 代表
博報堂コピーライターから(株)ネットプライス・クリエイティブディレクターを経てフリーに。企業のMMVやネーミング、サイトディレクションなど手がける。恋愛コラムやブログも人気を博す。


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