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地方事業者はSNSで何を狙うべきか

先日、高知の事業者さんにお声がけいただき、SNS運用のセミナーを行う機会がありました。事前に「どんな内容を期待されていますか」と伺うと、返ってきた要望は概ね次のようなものでした。アルゴリズムの仕組み、最新事例、伸びた投稿の型、リールの正解、トレンドの捉え方。要するに「成果が出る確度の高い方法」を知りたい、というニーズです。

果たしてそれでいいのか

この要望自体は自然で、むしろ正しい疑問だと思います。投稿に時間をかけても反応がなければ、労力が報われない不安が生まれますし、限られたリソースで成果を出したいのは当然。僕も普段から情報収集している分野なので、聞かれたら一定水準の回答はできると思うのですが、何かモヤモヤとした感覚がありました。果たして、それでいいのか。アルゴリズム最適化は、どちらかと言えば「都市型の競争環境」で発達した考え方です。情報が過密で、発信が洪水のように流れる場所では、視聴維持率や冒頭の掴み、投稿頻度、フォーマットなど、プラットフォームの評価指標に合わせた調整が必要になります。結果として、発信は効率化され、同じような構造の投稿が増えやすくなります。最近のSNSは、同じような投稿で溢れてますよね。

一方、地方の事業者さんが持つ価値は、最適化とは逆方向にあります。日々の暮らし、季節性、人の顔が見える営み、地域固有の文脈、少し不器用でも誠実なやり取り。こうした要素こそが「わざわざ選ばれる理由」になっています。ここに都会的な最適化を強く持ち込むと、地域の魅力が薄まり、発信が無個性化するリスクがあります。極端に言えば、「アルゴリズムに合わせるほど、良さ消える」可能性があるということです。地方の駅前や国道沿いが再開発されることで、個性が消えてしまう現象のSNS版です。

継続性はあるのか

また、アルゴリズムは安定したルールではありません。昨日まで効果があった方法が、仕様変更やトレンドの変化で通用しなくなることは珍しくない。アルゴリズムを追いかけ続ける運用は、継続負荷が高く、少人数運営の地方事業者さんほど疲弊しやすくなります。つまり、短期最適には見えても、中長期で見ると運用体制に合わないケースが起こり得ます。

じゃあ、どうすればよいのか

では、地方のSNS運用は何を軸にすべきでしょうか。結論としては、「流れてくる人を捕まえる」のではなく、「探している人に見つかる設計」に寄せる方が合理的です。地方の商品や体験は、衝動買いよりも、旅行前の下調べ、贈り物の検討、指名検索など“能動的な探索”の文脈で選ばれやすいからです。SNSはバズを狙う舞台というより、信頼を積み重ねる看板・カタログ・名刺の役割が強くなります。

具体的には、次のような情報を継続して整備するだけでも効果があります。何を提供しているか(商品・体験の中身)、価格帯、購入方法、発送可否 、季節のおすすめ、作り手や現場の様子、営業時間や連絡手段、よくある質問への回答。これらはアルゴリズム以前に、検討者の不安を減らし、購入までの障壁を下げます。

このやり方は、購入の獲得だけでなく、PR(プレスリリース)の側面もあります。記者やインフルエンサーが喜びそうな情報、新規性、固有の価値をSNSに並べておくことで、「ここを扱ったらバズりそう」と思って貰えれば勝ちです。苦手なバズや拡散は、得意な人の任せればよいのです。得意な人に見つかるために、SNSをやる。

もちろん、基本的な運用技術(見やすい構図、短く要点をまとめる、投稿の目的を明確にする等)は役に立ちます。ただし主役はあくまで地域の文脈と事業者さん自身の言葉であり、アルゴリズムは「天気予報」くらいの位置づけで十分だと考えています。気にはするが、軸にはしない。軸を置くべきは、誰に何を届け、どの情報で不安を解消し、どう信頼を積み上げるかです。

まとめ

田舎の魅力は、都会の最適化から生まれるものではありません。だからこそ、地方のSNS運用は「小賢しくアルゴリズムに勝つ」より、「らしさを保ったまま見つけてもらう」方向に設計する方が、結果的に強い――私はそう感じています。

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客員講師

矢崎 宏一郎

(株)ISSUNチーフマネージャー

得意分野はWEB広告、EC販売支援。WEB広告のなかでもAI系広告を得意とし、事業規模に合わせた集客戦略でD2Cの売上を2年で10倍にするなどで、日本上位3%の代理店であるGoogle Premier Partner認定に貢献。

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