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韓国で絶対的勢力のクーパン(Coupang)の事件から学ぶべきこととは?

ここ最近、高校生や大学生にどこで化粧品や日用品を買っているのかとヒアリングすると、Qoo10を利用しているという声をよく聞きます。自分たちの周りではほとんど利用しているという声を聴かない回答だったのでちょっと驚き。

他に利用しているサービスもSHEINだというので(一部の層だけでしょうか、Temuは以前よりあまり聞かれなくなってきている気がします)、海外のサービスの利用について不安はないかと聞くと、海外のサービスであるという認識はなかったという回答が多く、Qoo10もSHEINも日本の若者への自然な浸透にかなり成功していると言えそうです。

ところでQoo10はご存じの通り韓国 GマーケットのECプラットフォームが日本に進出したときのサービスを前身としています。その韓国は今まで最もITが進んだ東アジアの1つとして自負していたわけですが、2025年はデータセンターの火災をはじめとするIT関連のインシデントが相次ぎ、年末には国内最大のECプラットフォームの信頼が揺らぐ事件が発生しました。

以前も本コラムで記載しましたが、韓国ではAmazonという巨大黒船の上陸をはねのけ続けている絶対的勢力のクーパン(Coupang)が牙城を築いています。

数年前、いちどは日本への進出をあきらめ、昨年また「ロケットナウ」というフードデリバリーで再上陸を図っていますが(そして早速トラブルになりつつありますが)、韓国内では利用していない人がいないほどのサービスといわれます。

昨年末発生したこの事件はあまり日本のニュースで詳細が取り上げられていませんが、日本のEC業界でも注意が必要なこととして活用できることがあればと思いますので、基本事象からまとめたいと思います。

1. 事件の概要

クーパンは2025年11月末、約3,370万件(約3,370万人分)の顧客個人情報が漏洩したと公表しました。これは実質的に韓国国内の成人4人のうち3人が被害にあったと計算される数の大規模なデータ流出です。

流出したデータには氏名・メールアドレス・電話番号・住所・最近の注文履歴などが含まれましたが、クレジットカード番号などの支払い情報は含まれていないとされています(調査は継続中)。

流出は2025年6月下旬から11月までの間に発生していた可能性があり、会社側が異常を検知できなかった期間が長かったことも批判を浴びている事象の一つですが、そもそも何をみんながそんなに恐れているのでしょうか。

2.クレジットカード情報と同じくらい怖いこと

クレジットカード情報が流出していないのに何をそんなに大騒ぎしているのか、と日本国内であれば処理されると思います。

しかしながら韓国の国民的背景から照らすと、大きく2点の問題が見えてきます。

玄関鍵の流出

基本的に金属の鍵を利用して開錠・施錠を行う日本とは異なり、韓国では個人住宅についても物理的な鍵は利用されておらず、ほぼ電子鍵のみとなっています。

クーパンはロケット配送という即日配送をウリにしており、夜間の内にいわゆる置き配をすることで客足を伸ばしてきました。日本以上に集合住宅が利用されている都市部では、置き配のために共同玄関から入館する必要があり、クーパンでは各集合住宅の共同玄関の電子鍵情報を把握していました。

今回流出した情報にはこの共同玄関の電子鍵情報が含まれていたとみられ、今後、住居侵入などの犯罪が起きる恐れがあると報じるメディアもあり、インターネット上の犯罪と同じくらい物理的な犯罪リスクへの心配が高まったと言われています。

中国への情報流出に関する心配

今回、個人情報を流出させたのはある元社員による犯行によるものと報道されています。

後日明らかになったこととして、その元社員が中国国籍であったということで一層非難の声が高くなりました。

問題の元社員は2024年末に退社しているのですが、退社してから半年近く経過した6月から11月までの5カ月間にわたり、退社時に奪取した電子署名キーを利用して偽のトークンを繰り返し発行し、内部認証システムにアクセス。顧客情報を長期間にわたり少しずつ抜き取ることができていたといわれています。

クーパンのパク・デジュン代表(当時)はこの元社員について、「認証業務の担当者ではなく、認証システムを開発する開発者だった」と述べ、「退職者の権限は全て抹消した」と説明していましたが、ではなぜこの元社員が退職後にアクセスできたのか、情報流出が可能だったのかという経緯などについては明確な回答は示されていません。

現在この元社員は中国へ出国していることから、原因の追究には中国政府の協力も必要となっており、その点も会員の心配を増幅させる1つとなっています。

3.本事件による影響

本事件により、多くの国民がクーパンに対して不安感を持ったと言われています。それを如実に表す数値として「会員の離脱」が挙げられます。

ある調査機関が1,000人を対象に実施したアンケート調査によると、回答者の41.3%は個人情報流出の懸念でクーパンの利用を一時中断し、7.3%はプラットフォームを完全に脱退したと回答。

検索サイトでクーパン関連の情報を調べると、AIのお薦め回答として「クーパンに私の個人情報の削除を依頼する方法」が最上位に挙がってくるほどです。

IGAWorksモバイルインデックスによると、顧客情報漏洩が報道された直後と約1週間後のクーパンのデイリーアクティブユーザー数(DAU)は、

報道前(11月末日)約1,798万人
報道後(12月5日)約1,617万人

と年末商戦が始まっていたにもかかわらず、181万人以上減少していると公表しました。

一方ライバル的存在であるGマーケットでは、クーパンが漏洩を公表した翌日のDAUは25万人増加したとの報告があり、さらに 11Street や Naver Plus Store など他のECプラットフォームでも利用者数の増加傾向が見られたという報告が出ています(詳細な数値は未公開ですが、トラッキングデータで上昇傾向が観測されています)。

本事件は国家レベルの問題として取り組まざるを得ないものとなっていますが、犯行を行ったのはたった一人のエンジニアによるものといわれています。

日本と韓国では開発リソースに関する環境や技術者をとりまく状況は類似しており、私たちもこのニュースにより考えるべきことは多いのではないでしょうか。

今後どのような影響が出るのか、引き続き注目です。

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客員講師

酒井 愛子

株式会社リンクにてLinuxサーバの提案営業を担当しつつ、2016年よりメール配信システム「ベアメール」の立上げを行う。現在、営業の傍ら、各ECカート会社様、ショップ様のメールやサーバインフラに関するコンサルティングを行う。趣味は銭湯巡りとはしご酒。

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酒井 愛子

株式会社リンクにてLinuxサーバの提案営業を担当しつつ、2016年よりメール配信システム「ベアメール」の立上げを行う。現在、営業の傍ら、各ECカート会社様、ショップ様のメールやサーバインフラに関するコンサルティングを行う。趣味は銭湯巡りとはしご酒。

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