一般社団法人ジャパンEコマースコンサルティング協会

トップページ JECCICA記事 メルマガの配信解除率に振り回されていませんか?EC事業者が本当に見るべき指標と改善の考え方
シェア
ポスト
メール

メルマガの配信解除率に振り回されていませんか?EC事業者が本当に見るべき指標と改善の考え方

ECサイトでメールマガジンを配信したあと、担当者が気にする指標のひとつが「配信解除率」です。

配信解除が増えると、「内容が悪かったのではないか」「配信頻度が多すぎたのではないか」「お客様に嫌われているのではないか」と不安になる方も多いのではないでしょうか。

もちろん、配信解除率は無視してよい指標ではありません。通常よりも急激に上昇している場合は、配信内容や対象者、頻度、タイミングなどに問題が生じている可能性があります。

一方で、配信解除率を下げることばかりに意識を向けると、メルマガ本来の目的を見失ってしまいます。

ECにおけるメルマガの目的は、解除されないことではありません。顧客との接点をつくり、再購入や継続購入を促し、売上やLTVを高めることです。

本稿では、配信解除率をどのように捉え、どの指標と組み合わせて判断すべきか、EC事業者が実践したいメルマガ運用の考え方を解説します。

配信解除は必ずしも「悪いこと」ではない

まず押さえておきたいのは、配信解除が発生すること自体は、必ずしも悪いことではないという点です。

顧客の関心や生活環境、購入目的は時間とともに変化します。一度だけギフト目的で購入した顧客や、特定の季節にだけ商品を必要としていた顧客もいます。以前は関心があったものの、現在は情報を必要としていない顧客もいるでしょう。

こうした顧客が「今後はメールを受け取らない」と意思表示するのは、ある意味では自然なことです。

興味を失った顧客にメールを送り続けても、開封やクリック、購入につながる可能性は高くありません。むしろ、不要なメールを繰り返し送ることで、ブランドに対する印象を悪化させることもあります。

一定数の解除が発生したとしても、残った顧客の反応がよく、売上や再購入につながっているのであれば、その配信を単純に失敗と判断するべきではありません。

見るべきなのは、解除の件数だけではなく、「どの配信で」「どの顧客層が解除し」「その配信がどの程度の成果を生んだのか」です。

解除率を重視しすぎると、売上機会を失う

配信解除率を過度に気にすると、メルマガ運用は次第に消極的になります。

たとえば、解除率が少し上がっただけで配信回数を大幅に減らす、訴求力の強いキャンペーンを避ける、誰にも嫌われない無難な内容ばかりを送る、といった対応です。

一見すると顧客への配慮に見えますが、それによって開封数やクリック数、購入者数、売上まで減ってしまえば本末転倒です。

ECサイトでは、すべての顧客が自発的かつ定期的にサイトを訪れてくれるわけではありません。メールで新商品やキャンペーンを知り、それが再訪や再購入のきっかけになることも少なくありません。

配信回数を減らせば、解除率が下がる可能性はあります。しかし同時に、顧客との接点やブランドを思い出してもらう機会も減少します。

解除率が低いメールが、必ずしも優れたメールとは限りません。解除されていなくても、ほとんど開封されず、クリックも購入も発生していなければ、CRM施策としての成果は限定的です。

反対に、解除率が多少上昇しても、購入意欲の高い顧客に情報が届き、売上や再購入が大きく伸びているのであれば、改善余地はあるものの、一定の価値を生んでいると評価できます。

解除率は「成果指標」ではなく「警告指標」

配信解除率は、メルマガの成功を測る中心的な成果指標というより、顧客とのコミュニケーションに異常がないかを確認する「警告指標」として扱うのが適切です。

通常は一定の範囲内で推移していた解除率が、特定の配信だけ急激に上昇した場合には、何らかのズレが生じている可能性があります。

その際には、次のような点を確認します。

  • 件名と本文の内容にズレがなかったか
  • 必要以上に不安や焦りをあおる表現になっていなかったか
  • 配信対象を広げすぎていなかったか
  • 購入済みの商品を繰り返し案内していなかったか
  • 短期間に複数のメールが重なっていなかったか
  • セールやクーポンの案内ばかりになっていなかったか

重要なのは、自社における通常時の解除率を把握しておくことです。

配信単位や月単位で推移を記録し、平常時から大きく外れたときに詳しく原因を確認します。絶対的な数値だけで一喜一憂するのではなく、自社の過去実績と比較して異常を見つけるという考え方です。

売上やCVと組み合わせて判断する

メルマガの評価では、解除率だけでなく、複数の指標を組み合わせて見る必要があります。

代表的なものとして、開封率、クリック率、コンバージョン率、購入者数、配信経由売上、メール1通当たりの売上、リピート率、休眠復帰率などがあります。

それぞれの指標は、異なる段階を表しています。

開封率は「メールに興味を持ったか」、クリック率は「商品や情報をさらに見たいと思ったか」、コンバージョン率や売上は「実際の事業成果につながったか」を示します。解除率が表すのは、その中の「今後の接触を望まないと判断した顧客がどの程度いたか」という側面です。

したがって、解除率だけでメールの良し悪しを判断することはできません。

実務では、解除率と売上、解除率とコンバージョン率などを並べて確認します。配信頻度を変えた際も、解除率だけを見るのではなく、売上や購入者数がどのように変化したかまで追いかけることが重要です。

たとえば、週1回の配信を週2回に増やした結果、解除率はわずかに上昇したものの、売上や再購入者数が大幅に伸びたのであれば、頻度を増やした判断は必ずしも間違いではありません。

一方、売上やクリックがほとんど増えず、解除率だけが上昇したのであれば、頻度や内容を見直す必要があります。

「全員に同じメール」から脱却する

配信解除が増える原因として特に多いのが、顧客の状態に関係なく、全員に同じメールを送り続けることです。

初回購入直後の顧客、何度も購入している優良顧客、一定期間購入していない休眠顧客では、必要としている情報が異なります。

初回購入者には、商品の使い方や保管方法、ブランドの考え方を伝えるコンテンツが有効でしょう。優良顧客には、新商品や限定商品、先行販売の情報が喜ばれる可能性があります。休眠顧客には、人気商品の紹介や再購入のきっかけとなる提案が必要です。

また、購入商品や閲覧カテゴリー、購入回数、最終購入日などによっても、興味関心は異なります。

解除率を抑えながら成果を高めるには、単に配信回数を減らすのではなく、「必要な人に、必要な情報を、必要なタイミングで届ける」方向へ運用を変える必要があります。

一斉配信だけでなく、購入履歴や顧客状態に応じたセグメント配信、購入後の日数を基準にしたステップメール、カゴ落ちや商品閲覧後のフォローなどを組み合わせることが有効です。

顧客単位の「総配信数」にも注意する

担当者が見落としやすいのが、顧客一人ひとりに届いているメールの総数です。

一斉メルマガ、購入後のステップメール、カゴ落ちメール、キャンペーン案内、休眠掘り起こしメールなどを別々に管理していると、それぞれの担当者は適切に配信しているつもりでも、同じ顧客に短期間で何通も届くことがあります。

顧客から見れば、どの部署や施策から送られたかは関係ありません。単純に「このショップからメールが多く届く」と感じます。

施策単位の配信回数だけでなく、顧客単位で一定期間内の接触回数を確認し、必要に応じて配信を抑制することが重要です。

さらに、長期間にわたって開封やクリックがない顧客には、通常のメルマガを送り続けるのではなく、配信頻度を下げたり、休眠顧客向けの専用シナリオへ切り替えたりする方法も考えられます。

売り込みと価値提供のバランスを取る

解除を防ぐためには、メールの内容も見直す必要があります。

毎回「セール」「割引」「クーポン」だけでは、顧客は次第にメールを販促物としてしか見なくなります。値引きがないと購入しない状態をつくり、ブランドや商品の価値が伝わりにくくなる可能性もあります。

商品の使い方、選び方、比較情報、利用者の声、季節に応じた活用方法、スタッフによる提案など、購入を直接求めない情報も取り入れることが大切です。

販売促進のメールと、顧客の理解や満足度を高めるメールを組み合わせることで、継続的に受け取りたいと思われるメルマガに近づきます。

目指すべきは「解除されないメール」ではない

EC事業者が目指すべきなのは、誰からも解除されないメールではありません。顧客にとって価値があり、事業成果にもつながるメールです。

顧客の興味関心は変化するため、配信解除を完全になくすことはできません。また、一部の解除を恐れるあまり、反応してくれる顧客への訴求まで弱めてしまうべきではありません。

解除率は、問題の発生を知らせるサインとして確認する。その一方で、開封、クリック、購入、売上、再購入といった成果指標を併せて評価する。そして、顧客の購入履歴や状態に合わせて、配信内容と頻度を調整する。

この考え方を持つことで、配信解除率に振り回されることなく、顧客との関係を深めるメルマガ運用が可能になります。

解除率を下げること自体を目的にするのではなく、顧客ごとのコミュニケーションを最適化する。その結果として不要な解除を減らし、リピート購入やLTVの向上につなげることが、ECのメルマガ運用における本質的なゴールです。

シェア
ポスト
メール
客員講師

中村 隆嗣

得意分野/CRM

2014年(株)メディックスに入社し、大手製薬会社や外資系アパレルブランド等メーカー直販ECのコンサルを手がける。2018年にアクションリンクを立ち上げ、2023年ファブリカコミュニケーションズにジョイン。現在に至る。

関連記事

客員講師

中村 隆嗣

得意分野/CRM

2014年(株)メディックスに入社し、大手製薬会社や外資系アパレルブランド等メーカー直販ECのコンサルを手がける。2018年にアクションリンクを立ち上げ、2023年ファブリカコミュニケーションズにジョイン。現在に至る。

執筆記事の一覧

老舗通販スクロールに学ぶ
AI時代のEC・通販改革
次の成長モデルとは