コロナで進化した冷凍技術
コロナが収まって約2年が経ちました。
「そうか、まだ2年しか経ってないのか」とも思えます。
コロナ禍のなか、食品業界の業務支援を中心に多くの企業様の通販のお手伝いをさせていただきました。
食品業界に携わっていて感じるのは、「冷凍技術」が、コロナ禍の食品業界の新たなビジネスモデルを支える重要な役割を果たしたということです。
飲食店や食品メーカーは店舗での飲食機会の減少という打撃を受けましたが、テイクアウトやオンライン販売に活路を見出し、この動きを支えたのが冷凍技術の進化と低コスト化でした。これにより、これまで店舗でしか提供できなかった料理を、家庭でも手軽に楽しめるようになりました。
コロナ禍で注目されたのは、「急速冷凍技術」です。従来の冷凍庫に食品を入れて凍らせる緩慢冷凍では、食品内の水分が大きな氷結晶となり食品の細胞を破壊してしまうため、解凍時にドリップ(うま味成分を含んだ水分)が大量に流出し食感や風味が損なわれるという課題がありました。これが「冷凍ものは美味しくないよね」という風評に繋がってました。
これに対し、急速冷凍は、食品を短時間で凍結させるため、氷の結晶が非常に小さく、細胞へのダメージを最小限に抑えられます。その結果、解凍後も冷凍前の状態に近い食感や風味を保つことが可能となりました。
主な冷凍技術は以下の通りです。
ショックフリーザー(ブラストチラー)
強力な冷気を食品に当てて一気に凍結。冷凍技術では歴史は古く、食品業界には早くから普及してました。
液体凍結
食品をアルコールなどの不凍液に浸して急速に冷凍する技術。空気よりも熱伝導率が高いのでショックフリーザーより圧倒的に早く凍結できます。近年、装置の小型化・低価格化が進みました。
プロトン冷凍
磁石と電磁波、冷風を組み合わせた独自の技術。磁場と電磁波の力で食品中の水分子を均一に整列させることで、非常に小さな氷の結晶を一度に多数生成します。これにより細胞の破壊を極めて低く抑え、解凍後のドリップを大幅に減らすことができます。特に刺身や生食用の食材など高品質な状態で冷凍したい場合に効果を発揮します。でもお高いです。
液体凍結
磁場と電磁波のエネルギーを制御し、水分子を振動させながら過冷却状態を保ち、一気に凍結させる技術。解凍後のドリップがほとんどなく、風味、食感、色合いなどを維持できるため、非常に高価値な食材やデリケートな食品に適しています。医療分野でも応用されています。装置の価格も一番高級。でも生牡蠣をCAS冷凍したものは獲れたてとシェフでも区別が付かないと言われてます。
冷凍技術の進化と低コスト化は、ECサイトでの冷凍食品販売、冷凍弁当や冷凍ミールキットを定期的に届けるサブスクリプション販売、実店舗を持たずにテイクアウトやデリバリーに特化したゴーストレストランなどの新しい業態を生み出しました。また廃棄ロスを減らすして採算性を高めたという効果も見逃せません。
このように冷凍技術が進歩した結果、今までの「冷凍だからねぇ。イマイチだよね」から獲れたての新鮮な魚介類や野菜を現地で瞬間冷凍したものの方がある部分では品質が上回るほどになりました。
旬を大切にする日本人としては、一年中いつでも旬と同じクオリティのものが手に入るのは何だかな・・とも思いますが冷凍技術の進歩により確実に変革が起きているのであります。

JECCICA客員講師 斎藤 賢治
(株)クオカプランニング取締役会長
2001年お菓子パンの材料道具販売「cuoca」を立ち上げ、EC・リアル店舗・卸販売・レッスンスタジオとオムニチャネルを実践し最大32億円まで成長させる。食品の商品開発からプロモーションなどを得意とする。