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令和7年度 新年度からの補助金状況異常あり

令和7年度補助金シーズンが3月から始まりました。
しかし、従来からある「ものづくり補助金」また、本年度から新設された「新事業進出補助金」など含め、共通した新しい「ルール」をクリアするのが厳しいことをご存じですか?

賃上げのルールが厳しすぎる!!
例えば「新事業進出補助金」の基本要件を見てみましょう。

①付加価値額の年平均成長率が+4.0%以上増加
②1人あたり給与支給総額の年平均成長率が、事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上、又は給与支給総額の年平均成長率+2.5%以上増加
③事業所内最低賃金が事業実施都道府県における地域別最低賃金+30円以上の水準
④次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表等以上の基本要件を全て満たす3~5年の事業計画に取り組むこと。

となっております。それでは各項目について解説していきましょう。

①の「付加価値額」の計算方法は
付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費です。 
補助金制度では、事業計画期間中に付加価値額の増加が求められます。

具体的な要件は補助金の種類によって異なりますが、以下の基準が設けられています。

・中小企業省力化投資補助金事業終了後1~3年で、従業員1人あたりの付加価値額が年平均3%以上増加することが求められます。
・新事業進出補助金事業終了後3~5年で、付加価値額または従業員1人あたりの付加価値額が年平均4.0%以上増加することが要件となっています。
・ものづくり補助金革新的な製品・サービスの開発を行い、付加価値額の年平均成長率が3.0%以上増加することが基本要件とされています。
減価償却が年度毎に進むので、その分を営業利益と人件費で確保する形となります。

今回の補助金は②の要件が曲者です。未達だと補助金を返還しなくてはいけません。
・中小企業新事業進出補助金
給与支給総額の年平均成長率:以下のいずれかを満たす必要があります。
・事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上。
もしくは従業員及び役員の給与支給総額の年平均成長率+2.5%以上の増加。
・事業場内最低賃金:地域別最低賃金+30円以上の水準。
・ものづくり補助金
補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、従業員(非常勤を含む。以下同じ)及び役員それぞれの給与支給総額の年平均成長率を2.0%(以下「給与支給総額基準値」という。)以上増加させること。又は従業員及び役員それぞれの1人あたり給与支給総額の年平均成長率を事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間(2019年度を基準とし、2020年度~2024年度の5年間をいう。)の年平均成長率(以下「1人あたり給与支給総額基準値」という。)以上増加させること。

どの補助金の公募要領にも、本年度からはっきりと「目標未達だと補助金返還」と書いてあります。この賃金に関する条件が本当に厳しいのです。
賃金アップは従業員だけでなく、役員も対象です。ここに拒否反応される補助事業者が多いです。これ以上報酬を高額にして、所得税や社会保険料を引き上げたくないですよね。
昨今の物価高騰の中、従業員の賃上げに取り組むのは良いことですが、5ヵ年の経営計画を作成中に、人件費の試算中に手を止め、断念する補助事業者が本当に多かったです。
また都道府県における最低賃金の年平均成長率ですが、以下の通りです。

東京都 千葉県 長野県 大阪府 島根県 熊本県
2.8% 3.1% 3.3% 2.9% 4.0% 3.8%

元々最低賃金の高い都道府県は成長率低く、最低賃金の低い都道府県は成長率高い傾向。

例えば千葉県の現在年収500万円の従業員の場合、年度毎の賃金上昇はこうなります。

現在 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
500万円 516万円 531万円 547万円 564万円 581万円

補助事業者が試算すると3年目までは賃金上昇はなんとかなるけど、4年目と5年目は補助金が入金されて設備導入しても、賃金上昇分に見合う付加価値額が捻出されるかかなり難しい。こうなると役員分の上昇分は据え置きにならないか?といった質問もいただきましたが、残念ながら役員の給与も対象なのです。ダメだとペナルティです。

この賃上げ要件ですが、新事業進出補助金、ものづくり補助金、中小企業省力化投資補助金が条件厳しいです。また補助金の補助率アップは補助金枠の拡大の措置もありますが、これ以上の賃金アップを行う必要があり(年成長率6%!とか)、現実的ではないと思います。

ただ、こういうケースの会社には有利です。
例1)
ものづくり補助金申請 従業員3名 役員2名 従業員の1名はほぼ最低賃金。
この会社の場合、小規模事業者に該当し補助金は2/3、総事業費は1050万円。
申請する補助金は700万円(上限は750万円)

また、「設備投資による付加価値額アップ」を大きめに試算し、3年の事業計画だと賃金上昇も3年だけなので、計画も現実的なものになるだろうと予想出来ます。

また本年度から公募要領に「補助金返還」に関してかなり詳細に明記されております。
こういったケースは初めてです。ということは、経産局も無理を承知でこの賃金アップ条件を設定してきたのだと思います。私は数年後に補助金返還が相次ぐ予感がします。

というわけで本年度の補助金申請は細心の注意が必要なのです。
補助金のご利用は計画的に。

JECCICA客員講師 渡辺 太志

(株)アイズモーション経営企画部長 プロフィットシステム常務取締役 コンサルタントとして企業の経営戦略から組織開発までトータル支援が可能。 SNSを活用した集客・販促により宣伝広告費の圧縮を行い、経営改善に繋げるシステム作りのコーディネートを得意とする。

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