2020年 年頭所感 河野貴伸
2019年は、ECおよびデジタル領域におおいて、大きなニュースが多くありました。
業界再編、セキュリティ・インシデント、新しい販売方法の出現等・・・共通して感じているのは、ECと言われてきた存在において、「E」が希薄になってきたこと、そしてオフラインとオンラインの境界線が段々と希薄になってきたことです。
いままでも、「オンラインやデジタルテクノロジー」の重要性は問われ続けてきましたが、一方で「オンライン」そのものがある意味特効薬や飛び道具のような特殊なものとしての認識が強く、そういった前提をもとにした採用や組織への組み込みを行った結果、既存の組織体系とマッチせずチームが分解してしまう事象が多くあったように感じています。しかし、2019年はOMO(Online Merges with Offline)の考え方も一般的になり、オンラインとオフラインの融合が少しづつ、そしてあらゆる企業に浸透しはじめた結果、その最前線となる「Eコマース」の「E」がとれて、「コマース」全体のハブとなりえる存在にななることを求められはじめた、そんな年だったと感じています。
2020年はコマースハブとしての期待はさらに前進し、オンラインとオフラインの垣根を越えることはもはや当たり前となり、その先の「デジタルネィティブなブランドUX」が問われる時代にいよいよ突入してくると強く確信しています。
Eコーマスの機能としての話ではなく、いかにして全体設計を行った上でブランド体験に落とし込んでいくか。
これは日本国内に限らず、海外への販売を広げていくためにも必要不可欠な考えとなります。
そのヒントもまた、2019年に日本国内で大幅に認知度が向上した「D2C」と言われるビジネス体系に多く見受けられることが興味深いです。
イノベーションや、技術革新によって得られる「体験」はほとんどが「ラストワンマイル」。
このラストワンマイルにどれだけの需要があるかを考えることが大事であり
D2C という言葉が示す「ダイレクト」とは、この「ラストワンマイル」を埋めた状態、つまりコンシューマーとダイレクトに「つながる」状態を示しています。
「つながり」を必要としてる人はどれくらいいるのか?
(市場価値=セグメンテーション)
その人たちはどんな姿なのか?
(ターゲット設定)
既に繋がりは作られているのか?
(ポジショニング設定)
これらを調査し、十分な可能性が感じられれば、ブランドを構想、開発、実装する。そしてコンシューマーには象徴的かつ連続的なブランド体験を提供し続ける。これらの大いなる成功例がUSにおける成長中のD2Cブランドだと言えます。彼らから学ぶべきは、テクノロジーはもちろんのこと、ブランドの考え方、そしてECのあるべき姿と大いなる可能性です。
2020年は、オンライン(デジタル)とオフラインはいよいよ一つとなり、コンシューマーとダイレクトにつながるために、いかにして上質なブランド体験を実現するか。それらを現実に「実装」し、「コマースハブ」という存在に「Eコマース」が進化していく始まりの年となることを期待しています。
JECCICA客員講師 河野 貴伸
株式会社フラクタ 代表取締役
EC-CUBEエバンジェリスト
Eコマースに関わる人材育成とブランディングに重点を置き、業界の発展とEC-CUBEの普及、デジタルイノベーションの推進支援をメインに全国でセミナー及び執筆活動中。