広告AIにイキイキ動いてもらうために
GoogleのP-MAX広告など、AI系の広告は手動での広告運用とどう違うのでしょうか。大きな違いとして、広告のターゲティングにあります。手動での広告運用の場合、ターゲティングは「明確に指定するもの」です。
手動の広告運用と、AI系広告の違い
「30代 男性」というターゲティングをした場合、少なくとも広告の設定上は「30代 男性」にしか広告が表示されません。
注)色々なケースで「30代 男性」以外にも広告が表示されることはあるのですが、今回はシンプルにするために割愛いたします。
AI系の広告の場合、ターゲティングの設定はGoogleでは「シグナル」、Metaでは「Advantage+ オーディエンス」という言い方に変わっています。
この場合、「30代 男性」と広告の表示対象を指定していても、広告AIはあくまでもそれを「ヒント」として活用しますが、コンバージョンが獲得できそうと判断すれば「40代 女性」にも「20代 不明」にも広告を表示します。
一見するとAIは男性向けの広告を女性にも出すという、余計なことをしているように見えます。しかし、実際には男性向けの商品を買う女性も居れば、旦那さんのパソコンを使ってネットに接続している主婦の方なども居るわけで、これらの主流でないお客さんのことまで想定して広告の設定を行うのは現実的ではありません。
そういった「レアケース」のお客さんには競合も広告を表示できていないため、コンバージョンの獲得単価が安く「穴場」となっていることもしばしば。AI系の広告は、そういった「穴場」を見つけることを得意としています。
広告AIがイキイキ動く3条件
さて、話を戻します。
ここまでの話を踏まえるとAIでの広告運用で成果が出るケースとは、
①潜在顧客が多く(いろいろな属性の人に買われやすい)
②よいヒントを与えられて(インプットの質が高い)
③結果がすぐに分かる(リード期間が短い)
の3つを満たしている場合です。
①潜在顧客が多く(いろいろな属性の人に買われやすい)
先述の通り、AIはターゲットを指定してもそれ以外の場所に寄り道をしてしまうため、寄り道した先にもお客さんがいるような、潜在顧客が多い商品と相性が良いです。to C商材の中でも、日常的に買われるアパレルや食品などがそれに当たります。
逆に、潜在顧客の数が少ないto B商材は少しでもターゲットから外れてしまうと成果が出ないことから、AIでの運用よりも手動の運用に軍配が上がるケースが多いです。
②よいヒントを与えられて(インプットの質が高い)
AIによる広告効果を改善する場合、良いお手本となるデータが必要です。そのために一番良いのが「既存顧客」の情報を提供することです。
MetaではコンバージョンAPI、Googleでは拡張コンバージョンなどの機能がそれにあたり、コンバージョンしたユーザーの詳細なデータを提供することで広告AIの学習効果を高めることができます。
近年、広告配信にCookieのデータが活用できなくなっているため、通常のコンバージョンタグではうまく学習が進まないケースも多く、上記のような機能でファーストパーティデータを収集することの重要性が高まっています。
③結果がすぐに分かる(リード期間が短い)
過信は禁物
さて、ここまでAIによる広告が上手く行く、行かないケースをご紹介しましたが、今年に入ってから少し状況が変わっているように思います。
これはあくまでも予想なのですが、AIでの運用を行うアカウントが増えた結果、今までは「穴場」だった場所の多くがAIに見つかり、「穴場が穴場でなくなる」現象が起きているのではないでしょうか。非公式の場ですが、Googleの営業担当曰く、今年に入ってからP-MAX(AI系広告)を本格導入するアカウントの数がかなり増えているようです。先日のGoogle Marketing Live 2024 でもP-MAXに関する機能アップデートが発表されていましたので、Google としても各アカウントへの導入に力を入れていることが伺えます。
昨年はAI系の広告の方が成果が良かったアカウントでも、今年に入ってからじわじわと成果が悪化し、手動での設定の割合を増やしたところ成果が改善する、というケースが増えています。
AIに頼る広告運用は便利ですが、AIに頼るかどうか判断するのはヒト。状況に合わせて最適な方法を選択するために、トライと検証を続けることがなにより大事ですね。
JECCICA客員講師 矢崎 宏一郎
(株)ISSUN チーフマネージャー
得意分野/WEB広告 EC販売支援
WEB広告のなかでもAI系広告を得意とし、事業規模に合わせた集客戦略でD2Cの売上を2年で10倍にするなどで、日本上位3%の代理店であるGoogle Premier Partner認定に貢献。