テキストから動画生成が可能になった今、逆に“リアルの価値”が高まる理由 ――AI時代の本質をどう捉えるか
文字だけで動画が作れる時代が来て、私が思ったこと
最近、プロンプト(指示文)を入力するだけで高品質な動画が生成できるAIツールが登場しました。わずか数行の指示でセミナー映像が作成でき、ナレーションの声質、話すスピード、さらには背景のデザインまでAIが自動的に仕上げてくれる。あまりの自然さに「私、本当に話していないのに…?」と一瞬戸惑ってしまったほどです。
これまで動画制作といえば、構成づくり、撮影、編集、音調整など、多くの工程を必要とするものでした。それが今や、AIがテーマに合わせて内容を組み立て、見やすく整理した映像として完成させてくれる。企業研修やセミナー、商品紹介動画などでも実用が進み、制作のハードルが一気に下がりました。
便利さに驚きつつも、どこか心の奥で「これでいいのかな?」という気持ちも湧きました。なぜなら、AIの動画がどれほど完成度が高くても、視聴した人の心の中には必ず、「この人は実際にはどんな人なんだろう?」という感情が生まれるからです。
つまり、AIがここまでできるようになった今こそ、リアルな対面・生の声・その場の空気が、逆に価値を取り戻すのではないかということです。AIの進化によって「会いたい」「直接聞きたい」「空気を感じたい」という気持ちが強まる──その可能性に気づいた瞬間、AIを恐れるのではなく、“人だからこそできること”をより深く考えるようになりました。
哲学=問いを持ち続けること
少し前までは、動画編集スキルやPowerPointの表現技術など、“作り上げる力”が求められました。しかしAIがその部分を担えるようになり、今後重要になるのは“意図や想いをどう言語化するか”という力です。
AIは膨大な情報を整理することは得意ですが、「なぜその話を今するのか」「誰に届けたいのか」「どんな感情を伴わせたいのか」といった、人ならではの意思まで読み取ることはできません。たとえば「睡眠改善」というテーマを語るとき、子育て世代の体験を軸にするか、経営者としての健康視点から語るかで、言葉は自然と変わります。それはAIには判断できない、【生き方から生まれる言葉の選択】です。
特に女性は、相手の気持ちを想像しながら言葉を選ぶ力に長けています。これはAI時代において大きな強みです。プロンプトを書くという作業は、単なる指示ではなく、「相手の立場を想像し、どう伝えるかを設計する行為」だからです。
つまり、AIを使いこなす人とは、「操作が得意な人」ではなく「言葉を通して人の心を動かせる人」。
プロンプトとは“思考の設計図”。だからこそ、経験、感情、視点が豊かであることが、AI時代における最大の武器になると感じています。
AI動画が増えるほど、「直接話してみたい人」へ価値が集中する
AIによりセミナー動画を小さなテーマに分けて配信し、視聴者の反応を見ながら内容を自動調整することも可能になりました。さらに、よくある質問を予測してAIが回答動画を生成したり、一人ひとりに近い形で解説を加えることもできます。例えば「睡眠と自律神経」のセミナーであれば、視聴者の反応に応じて「こんな症状の方にはこういう対策もあります」とAIが追加説明する──まるで一対一で話しているような体験です。
しかし、その映像が高く評価されたとき、人はこう思います。
「この話をしている人に、実際に会って話してみたい。」
AIが情報を届ける役割を果たすことで、かえってリアルで会う価値が際立つのです。AIが“伝える”なら、人は“感じさせる”。そこに大きな役割の違いがあります。だからこそAIの普及は、人が人として価値を発揮する場所を生み出しているとも言えます。
AIが入口となり、リアルの時間が“選ばれる価値”になる未来
今後のセミナーや教育の形は、「AIで興味喚起 → リアルで深める」という流れになると考えています。AIを使った動画で知識を届け、質疑応答も自動で補完する。しかし、その体験が本当に心に残った瞬間、次に求められるのは“直接の対話”です。
「この考え方を生で聞いてみたい」「実際の空気感を感じたい」「一度会って話してみたい」。そう思われた人にだけ声がかかる、プレミア型のリアルセミナーや少人数グループ相談会がこれから増えていくでしょう。AIを入口として広く発信することで、リアルの場は【選ばれた人だけの特別な体験】へと進化します。これは、ただの対面イベントではなく、ファン化・コミュニティ形成にもつながる流れです。
だからこそ大切なのは、「AIを使える人」になることではなく、
“AIを経由しても、会いたいと思われる人であること”。
そのためには、自分の体験を深め、想いを言葉にし、人と真摯に向き合う時間を大切にすること。AIが情報を届ける時代において、最後に選ばれるのは“心を動かす話ができる人”だと、私は思っています。
●最後に
AI時代とは“生成の戦い”ではなく、【体験の深さと人間力の戦い】です。動画や文章がAIで作れるようになればなるほど、「その言葉を書いた人が、どんな景色を見てきたのか」「どんな想いで話しているのか」が問われるようになります。
AIの進化を恐れる必要はありません。むしろそれは、人間だからこそ伝えられる価値を浮き彫りにしてくれる存在。情報を届けるのはAI、感情を動かすのは人。その役割の違いを理解し、AIに任せる部分は任せて、私たちはもっと豊かに経験し、感じ、言葉を磨いていけばいい。
人が人として向き合う時間が、これからますます価値を持つ時代へ。
その未来を、AIと共に創造していければと願っています。
