通販サイトにおける新たな方程式の必要性 vol.7
CRM実践編:届け方を変えれば、関係性はもっと深まる
1. はじめに(前回の振り返り)
前回はCRMの基本として、「メンバーインセンティブ」「セカンドアップ」「アニバーサリー」の3つを紹介しました。どれも再来訪してもらうための入口をつくるCRMのベーシックな考え方です。
今回はそこから一歩踏み込み、「誰に、どう届けるか」を設計することで関係性をさらに深めていく、実践的なCRMについて3つお話します。
2. 圧着ハガキDM ― 思い出してもらうための接点をつくる
我々の肌感では、2割ぐらいの店舗さんしか実施されていない圧着ハガキDMです。
開く動作自体が行動になるCRMです。ハガキの方が有効的な相手の時に使います。たとえば、顧客層が郵便を好む年代層であったり、メールやSNSだと伝達率が悪い場合です。
・ポイント失効の前に「まだ使えますよ」と通知する
・シーズンキャンペーン前に「○○様へ先行案内」
・しばらく購入のない顧客に「最近お会いしていないので…」
売り込みではなく人との関係性を思い出すきっかけとして届けることで、再訪率は大きく向上します。
テンプレート化せず、名指し・人感あるトーンを持たせることが成功のカギです。
メールが1通0.1円だとすると、ハガキは80円程度でコストは800倍ですが、閲読率の差、視認性と補完性を鑑みると、ターゲットがハガキに適しているのであれば、効果的なのです。
3. オンデマンド同梱チラシ ― 紙でパーソナルな体験を届ける
通販において、同梱物は静かな接客です。ここに顧客別の情報をオンデマンドで差し込めば、「これは自分のために用意されたんだ」と感じてもらえます。
たとえば、購入に関連した商品を個別におすすめ(デジカメならバッテリー)などです。
こちらも圧着ハガキDMと同様に保存性に優れているので、一通一通は小さくても、積み重なれば大きな差になります。
販促というより、絆を深めるレターという設計がポイントです。
4. 行動心理セグメント(SEM)―「誰に、どう響かせるか」を変える
今回の本弾です。CRMでよくある課題が、「何を送るか」にばかり意識が向き、誰にどう届けるかの視点が抜けること。
よくあるCRMの教科書に書かれていないのが、行動心理セグメント(SEM)という考え方です。
■四柱推命のメソッドに基づく3つのタイプ
| タイプ | 特徴 | 効果的な例 |
|---|---|---|
| Mタイプ(慎重型) | よく調べて納得してから買いたい。比較・レビュー重視。 | 「比較表はこちら」「レビュー★4.8」など信頼性を提示 |
| Eタイプ(損得型) | 損をしたくない。コスパ・送料無料・限定価格に反応。 | 「今だけ20%OFF」「送料無料は今週末まで」 |
| Sタイプ(直感型) | 価格や評判はどうでもよく、“欲しいときに買う”。即断即決型。 | 写真・動画・感覚的なコピー。「見た瞬間に欲しい」をつくる |
■ 同じ商品でも、響く言葉はまったく違う
たとえば、5,000円の加湿器を紹介する場合、
・Mタイプには:「静音性・電気代・比較データを提示」
・Eタイプには:「今なら送料無料+限定ポイント10倍」
・Sタイプには:「癒される夜をこの1台で」「写真で想像させる演出」
商品を変えるのではなく、接客を変えるだけで、購入率・満足度・リピート率がすべて変わるのがSEMのすごさです。
■ SEMは切り口の一例にすぎない
大切なのは「接客を変える」という視点であり、SEMの3分類はその一つのツールにすぎません。たとえば、以下のような切り口でも同様の設計が可能です。
・血液型タイプ別
・世帯年収や職業層
・家族構成・ライフステージ
・住んでいる地域や気候、趣味嗜好
何を基準にしてもかまいません。「この人はどういう価値観で、何を気にして、どう決めるのか?」を考えれば、言葉の選び方、訴求順序、タイミングを自在に設計できます。
CRMは管理ではなく共感のデザインなのです。
5. まとめ
CRMを深化させるカギは、「誰にどう届けるか」を設計できるかどうかです。
・圧着DMは、関係を思い出す接点
・同梱チラシは、届けたい文脈を添える手紙
・SEMは、響く言葉を選び直す技術
すべてに共通しているのは、お客様を人として見て、言葉を選ぶ姿勢。
それがリピートの本質であり、長期的なLTVを支える根幹になります。

JECCICA理事・講師 豊島 恵太
EC得意分野/食品通販支援
大学卒業後、照明メーカーを起業。2013年、株式会社Eストアー入社。サポート、セールス、コンサルタントを経験し、現在は企画設計室のマネージャーとしてECの未来を作る活動
を行う。