通販サイトにおける長期トレンドへの対処 Vol.2:情報消化不良への対処
前回の「人口減少への対処」では、避けられない構造課題として人口減少と労働力不足を取り上げ、基本に立ち返る重要性を整理しました。今回のテーマは、スマホ、SNS、AIの進化によって生まれた新たな構造課題、情報消化不良です。
いま、消費者は一日に触れる情報量が増えすぎ、何が本当に自分に合っているのか判断できない状態にあります。どのブランドも広告やSNSで発信量を増やしていますが、顧客の記憶容量は変わりません。
結果、情報が多すぎて“どこで買えばよいのか”がわからない。つまり、選ばれにくい時代になっています。
この「情報消化不良」時代において重要なのは、情報量を増やすことではなく、顧客を理解し、顧客が理解しやすい形で届けることです。
伝えるマーケティングから、届くマーケティングへ。
以下の3つを対応の柱として整理します。
1. 新規獲得よりも既存回転を増やす
情報が溢れる今、顧客は「信頼できる店」を選びます。
つまり、これまでの取引を通じて趣味嗜好・購買傾向を把握している本店ECが、他モールや広告依存よりも圧倒的に優位です。
本店通販は、顧客一人ひとりの行動履歴・購入理由・好みを最も深く理解できる接点です。
この蓄積があるからこそ、「また買いたい」「次もここで買おう」と思われるコミュニケーションができます。
新規を追う広告より、既存顧客との再接点を設計する方が、顧客の情報処理を助け、選ばれる確率を高めます。たとえば、購入後に活用法を紹介するフォローメール、利用周期に合わせたリピート提案、関連商品のタイムリーな案内など。こうした「顧客が理解しやすい提案」が、情報過多の時代の最適解です。
2. 市場は探すのではなく、つくる
人口増加の時代は、「大きな市場の中から自社の領域を探す」考え方でした。しかし、人口減少と情報過多が進む現在では、それが通用しません。あらゆる分野に競合が存在し、顧客も比較に疲弊しています。
これからは、「市場を研ぎ澄ませること」こそが「市場をつくること」です。
つまり、すでに持っている自社の顧客基盤やファン層を中心に、価値軸を明確に磨き上げていく。自社の強みを改めて定義し、そこに合う顧客との関係を深めることが「市場をつくる」という意味になります。
新しい顧客を探しに行くよりも、既存顧客の中で「より深い満足」を設計する。
その積み重ねがブランドの独自市場を形成し、結果として選ばれやすさをつくります。
3. 広告するな、告白せよ
情報消化不良の時代に、単純な広告投下はむしろ逆効果です。
顧客は「また似たようなメッセージ」と感じ、関心を遮断します。
この時代に響くのは、「広告」ではなく「告白」です。
つまり、「あなたに話しかけています」というパーソナルな発信。
商品の性能よりも、「なぜその商品をつくったのか」「誰の課題を解決したいのか」を誠実に語ることが、顧客の理解を助けます。
広く告げるのではなく、深く届ける。
たとえば、顧客の体験談や開発者の想い、日々のストーリーなどを通して共感でつながる。この温度感が、情報過多の時代において唯一、顧客の記憶に残る要素です。
4. デジタルマーケでも目的はダイレクトマーケ
AIや自動化ツールがどれだけ進化しても、最終目的は「顧客と直接つながること」です。顧客が情報を受け取りにくい時代だからこそ、誰に・どの順番で・どのトーンで伝えるかが重要です。
広告の最適化やSNSの拡散は手段であり、ゴールではありません。
本来の目的は、顧客一人ひとりと対話し、共感を積み重ねること。
つまり、デジタルであっても「ダイレクトマーケティングの思想」に立ち戻ることです。
メール、LINE、DM、動画、どんな媒体でも、「1対1で理解される」ことを前提に設計する。それが、情報消化不良時代における唯一の「伝わる仕組み」です。
まとめ
顧客が情報を処理しきれない時代に、企業が取るべき方向は明確です。
●新規獲得よりも、既存顧客の回転を高める
●市場を探すのではなく、自社市場を研ぎ澄ませる
●広告ではなく、告白で伝える
●デジタルであっても、目的は常にダイレクトマーケティング
顧客の頭の中には「情報の飽和」と「選択疲れ」があります。
だからこそ、顧客と向き合い理解する企業が強い。
情報を届けるより、理解をつくる。
これが、AI時代の本質的なマーケティングです。

JECCICA理事・講師 豊島 恵太
EC得意分野/食品通販支援
大学卒業後、照明メーカーを起業。2013年、株式会社Eストアー入社。サポート、セールス、コンサルタントを経験し、現在は企画設計室のマネージャーとしてECの未来を作る活動
を行う。