JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

最新セミナー・イベント情報
お申込みはこちら

通販サイトにおける長期トレンドへの対処 Vol1:人口減少への対処

これまで「通販サイトにおける新たな方程式」シリーズでは、時代の変化による「集客×転換×客単価」の方程式から「顧客数×来店回数」の新方程式の必要性を連載してきました。今回は、AIの進化によって変化が加速する現代において、企業の存続に直結する構造課題に備えられているかを扱います。

この背景には、EC運営相談の現場で強く感じるのが、人口減少や労働力不足といった長期トレンドに対して、十分な対策が取れていない企業様が未だ多いという現実です。短期の売上対策や個別施策に追われ、構造課題への本質的な打ち手が後回しにされるケースは少なくありません。

だからこそ今、「自社ではできているはず」と思っていても、本当に十分かどうかを改めて点検する必要があります。構造課題は誰も避けられない前提条件であり、危機意識をもって基本に立ち返っていきましょう。

1. ターゲットセグメント:中高年も主役に
人口減少が進むなかで拡大するのは中高年層、とくに50〜70代の新現役世代です。可処分所得と購買意欲を併せ持つこの層は、今後も消費を支える存在となります。健康、学び直し、趣味、生活利便といったテーマでの商品開発やサービス設計やマーケティングによって、人口減少というファクターをビジネスから外すことができます。
わかりやすい例がロクシタンです。かつては、現在より若齢をターゲットにブームを作り、その後、中高年プロモーション(売り方や示し方、売り場も百貨店など)に切り替え、最後に高齢にシフトしています。
人口は減るという一辺倒な概念を外すこと(必要な視座の変更)が処方箋です。

2. 省人化の徹底:機械化と標準化
人手不足は既に多くの現場で深刻です。単純・繰り返し作業はRPAやAIに移行し、人は顧客体験の強化に専念すべきです。たとえば、年間の通販売上100億円を超える企業様でも、機械化を進めたことによって、受注処理が1日30分で完了しているケースもあります。
●受注・出荷処理:OMSとWMSが一体化した自動出荷ソリューションの活用など
●在庫管理:AIを活用した需要予測に基づく自動算出など
●顧客対応:チャットボット、AI電話応答による一次対応の併用など
●売上改善:常時自動改善のA/Bテストやレコメンドなど

「人をどう配置するか」ではなく「人が判断すべき領域をどう設計するか」への転換こそ、人口減少時代の競争力となります。

3. 選択と集中:非コアはアウトソース
すべてを内製するのはもはや非現実的です。物流、バックオフィス、広告運用など、スケールメリットや専門性が求められる領域は外部に委ね、社内リソースは商品開発・顧客理解・ブランド価値向上といったコア領域に集中すべきです。

自社で行うべき、絶対に外注してはいけない仕事もあります。それは「顧客とのコミュニケーション」と「コンテンツの中身づくり」です。この二つは外注業者よりも、自社人材の方が、はるかに深く、詳しく、よく理解しているからです。

4. 機械化しない選択:人にしかできない仕事
前述のアウトソースしてはいけない仕事とイコールになりますが、「顧客とのコミュニケーション」と「コンテンツの中身づくり」です。理由を述べます。
過去を振り返ると、時代ごとに消費の主軸は大きく変遷してきました。

ヒトの時代:生命・衣食住・団地ブーム、病院や学校など「暮らしの基盤」
モノの時代:三種の神器、家電、カメラ、自動車、より豊かさを実感できる商品群
コトの時代:旅行、イベント、外食、アミューズメントなど「体験価値」
イエの時代:パソコン、スマホ、ネットショッピング、SNS、ITの普及
エアの時代:感覚・感性、肌感、心地よさ、信頼、安心、仲間といった価値

現在はまさに「イエの時代」を経て「エアの時代」にあります。人口減少への対処は不可避ですが、単なる効率化・省人化にとどめるのではなく、時代が求める感覚・感性の価値づくりに人の資源を振り向けることこそが、企業の持続的成長につながります。

まとめ
人口減少は避けられない現実ですが、対応できる部分は大きいです。
●中高年層も主役とするターゲットセグメント
●機械化・自動化による省人化
●非コア業務のアウトソース
●人にしかできない仕事を守る

これらを徹底することで、労働力不足を嘆くのではなく、少人数で最大成果を上げる設計に転換できます。いま一度、基本に立ち返り、自社の体制が構造課題に耐えられるものかを点検しましょう。

JECCICA理事・講師 豊島 恵太

EC得意分野/食品通販支援
大学卒業後、照明メーカーを起業。2013年、株式会社Eストアー入社。サポート、セールス、コンサルタントを経験し、現在は企画設計室のマネージャーとしてECの未来を作る活動
を行う。

 - JECCICA記事, お知らせ, その他, コラム, ニュース

JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

Copyright© JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会 , 2025 All Rights Reserved.s