第2回 深圳越境EC視察ツアー
ツアー概要
日程:2018年10月24日(水)~27日(土)
主催:JECCICA
参加者:14名(12社)
訪問企業団体:深圳市越境EC協会、TOMTOP、Irobotbox、天虹百貨店
深圳は、40年ほど前は人口3万人ほどの漁村でしたが、改革開放路線により1980年に中国初の経済特区に指定されると香港に隣接する地の利もあって急速に発展し、今では人口1300万人です。ファーウェイ、テンセント、DJIなど著名なハイテク企業、製造業の本社があり、「中国のシリコンバレー」「世界の工場」などと呼ばれます。中国全土から若者が集まり、65歳以上の高齢者がわずか2%という若さと活気にあふれた街です。
そんな深圳の有力企業を訪問し、経営者から直接話を伺う視察ツアーでした。取引や提携などのビジネスマッチングも兼ねています。今回は、昨年12月に続く第2回目のツアーでした。深圳の緯度は沖縄より南であり10月下旬なのに日中は気温30℃に達しましたが、とても濃い視察内容に参加者の皆さんは疲れもみせず、刺激の連続だったようです。
10月24日(水)
「深圳市中日経済文化交流促進会」歓迎会
深圳入りした日の夕食は、早速ご馳走になりました。深圳市中日経済文化交流促進会(以下、促進会)は、半官半民でできた一般社団法人で、日本のJETROのような組織です。今回のツアーは、訪問企業のセッティングや移動手段の手配から当日の通訳・アフターフォローまですべて促進会のお世話になりました。
10月25日(木)
「深圳市越境EC協会」交流会・マッチング
おしゃれな会場でした。深圳市越境EC協会(SZCBEA)は、2014年に中国で初めて発足した越境ECの企業団体で、会員数も1600社を超える中国最大の越境EC組織です。
SZCBEA側、JECCICA側、それぞれの参加者が自己紹介をして交流しました。SZCBEA王会長からは、アメリカとの貿易摩擦もあって日本からの商品に期待しているとの言葉もありました。
中国の越境ECは30~40%の成長を続けており、その半分を深圳の越境EC企業が占めているとのことでした。SZCBEAとJECCICAは、会員企業の交流進出を相互支援する関係にあります。
後半は、マッチングでした。自由に興味のある企業のところへ行き、カタログを見ながら、あちこちで商談が始まりました。今回、中国への輸出希望としては、高級フルーツ、子供服、伝統工芸品の人形・鉄器・陶磁器などの企業が参加していました。
生鮮品スーパー視察、貸し切りバス
昼食前に、最近出店したというアリババグループの生鮮品スーパーを視察しました。ライバル企業テンセントのお膝元での出店。決済は無人レジでした。
今回の視察は、この貸し切りバスでの移動でした。
「TOMTOP社」訪問
午後は、郊外にあるTOMTOP社へ。深圳の越境ECでもトップ3に入る大手企業で、数千万円の売上規模です。
TOMTOP側からは、輸入担当、輸出担当、システム担当の各責任者が出席して、現状の事業内容などについて説明してくれて、質疑応答や意見交換を行いました。食品、ベビー用品、化粧品、洗剤が売れ筋だとのことでした。
従業員の席の後ろには、仮眠用マットレスが置いてありました。一人1枚ずつ、全員に。日本は働き方改革などといっていていいのだろうか…、と少し不安になります。
10月26日(金)
「Irobotbox社」訪問
越境ECで実績を上げている企業で、その実績を生かした越境ECに特化したERPシステムの販売も行い、事業の2本柱としています。今回の訪問先の中では規模は小さめですが、それでも年商15億元(約240億円)です。深圳では中くらいの規模とのことでした。
促進会・黄代表とIrobotbox李社長。
李社長は、2001年にECスタート、製造から輸出まで問屋を介さず世界中に直販を行ってきました。欧米、ロシア、アジアなど100ヶ国以上と取引を行い、一日当たり8万件の注文を処理しています。今後は、日本、インド、ベトナムなどの商品も輸入して、世界へ販売したいとのことでした。
この会社のキモの一つ、物流面を支えるYun Fulfillment社の彭社長も出席してくれていました。世界の主要空港の近くに中間倉庫を持ち、郵便より速くDHLより安いサービスを実現しているのだとか。日本にも進出予定で、すでに大阪に子会社を設立済み。
eBay、Amazon、タオバオなど世界中のECモールへ接続して、受注処理、在庫管理、物流手配、各種分析までを自社開発のERPシステムで処理しています。そして、そのシステムの販売もしています。
李社長が昼食をご馳走してくれました。なお、李社長は日本からの輸入を進めるため、近日中に十数社で来日予定です。
「天虹百貨店」訪問
午後は、中国最大手の百貨店グループ天虹へ。スーパーやコンビニなどもやっています。
天虹グループの説明を受け、経営的なことやシステム的なことまで、深い議論が交わされました。1984年に中国・香港合弁で設立され、2003年から大きく発展、現在は従業員数6.9万人、年商180億元(約2880億円)。流通量は膨大な数字になりますが、テンセントと提携して、オンライン・オフラインの数字を一元化しています。オンラインでは、そのデータを販促に利用しており、ネットでクーポン発行→実店舗に来店の流れがもっとも確実に成果が上がるとのことでした。デジタル経由の来店は約30%。
おしゃれなオフィスへの入り口。このあと、床から天井までの大画面に各種数字(ECも実店舗も)が表示されているデータセンターにも案内してもらいました。セキュリティのかかっている部屋で、そこはさすがに撮影禁止でした。
天虹グループが試験運用している無人コンビニ「Well Go」にも案内してもらいました。
QRコードを読み込んで入店し、選んだ商品を専用のトレイに入れて、QRコードで決済。初回は送られてくる認証コードの入力が必要だったりして、ちょっと面倒です。
ツアー最終日の夕食
今回、食事はずっと中華料理でしたが、どこも非常に美味しかったです。
上海ガニ、やっぱり美味しかったです~
10月27日(土)
それぞれ帰国の途につきました。
今回は、ツアー中に安倍首相の訪中が重なったこともあり、日中友好ムードの高まりを感じました。中国は輸出の販売力は抜群にありますが、現在は米中貿易戦争もあって世界中からよいものを輸入して、それも世界に販売する(個人への越境EC)、そんな流れになってきています。特に深圳の輸出は25年連続で中国一位、中国の輸出の半分以上を占めています。市場開放のこの好機、しばらく深圳からは目が離せませんね。
JECCICA客員講師
芦澤 実
(有)芦澤商会 代表取締役