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リアルの商業施設はもっとニッチに?

カメイドクロックが地元密着なワケ
先日、東京・亀戸に新たな商業施設「カメイドクロック」がオープンするのに合わせて、プレス内見会に行ってきた。そこで思ったのは商業施設然り、出店する企業然り、従来の考え方とは違ったニッチな発想が必要だという事だった。

小売が変革の時を迎えている事を実感したのだ。まずここにきて僕は今後「商業施設は商店街化していく」のではないかと思った。今までなら都心部を中心に名だたるブランドが名を連ね、大々的に宣伝をかけて集客していたが、今の時代には相応しくない。

コミュニティを醸成する場所へ
例えば、ここではeスポーツを楽しむ空間「カメスポ」という場所が存在する。

単なる遊び場を提供しているのではなくて、ここを起点にコミュニティが生まれることを意図している。その証拠に「カメイドタートルズ」という亀戸を基点としたスポーツチームの存在を明らかにしている。つまり、その活動をこの場所で後押ししながら、住民の人々の関心を惹くのである。「場所」ではなく「こと」である。

商業施設側が、そういうことをするようになった背景には何があるのか。察するに、それは発信源が変わってきているからであろう。これまでのように「マスメディア」が集客を担うのではなく、多くのお客様を一気に集めるのとは違って、これからはそこに集まる「お客様自身」が発信者となって集客する時代なのである。まさに商業施設は商店街化して、集まる人が主役の時代である。

案内所は案内する場所ではなかった
また、企業においても従来とは違う姿勢を感じる。顕著にそれが表れているのが「インフォメーションコーナー」である。

え?インフォメーション?と思われた人もいるだろう。インフォメーションは、どこの商業施設にも当たり前に存在するが「カメイドクロック」ではヤマト運輸が運営している。大事なのは「ヤマト運輸の」インフォメーションではなく「施設全体の」インフォメーションをヤマト運輸が担っている事。裏には倉庫があって常温から冷蔵、冷凍まで保管できるようになっていて、段ボールまで購入できる。だから、上の階のお店で買ったものをここから配送できる。そのくらいまでは想像がつくだろう。

ただ、僕が注目したのはそこではない。ヤマト運輸はそこに集まる情報こそが宝の山だと思ったわけである。もしもそれが本当にインフォメーションで完結していたら、それらは宝の持ち腐れである。寄せられる相談は地元のお客様にとっての悩みであり、必要不可欠なニーズを探り出すヒントになる。

もはや配送会社のつもりはなく寧ろその強みを活かして、どうやって地域に根ざしたプラットフォーマーになれるか。その新しいビジネスチャンスを探るべく、敢えてインフォメーションを引き受けるのである。

修理専門だから受け入れられる
お店のあり方も変容していて、気になったのは修理をメインにする「時計宝石修理研究所」。アクセサリーや時計など、ありとあらゆるものの修理を担うわけだが、一部の人にとっては必要不可欠な存在である。

例えば、修理をしたくてメーカーに問い合わせをしても、古くなるほど材料が生産終了になっていることは少なくない。だからこそ、彼らは修理に特化して材料がなければ自らそれ用に購入してくる。そうやって修理のプラットフォームになったのである。

亡くなった親の形見であるとか「プライスレス」なものの修理が多く寄せられるのでその金額に糸目はつけない人も多い。彼らが手間をかけて、材料を探してきてくれることに感謝して、それがリピーターになっていく。信頼と共にそのビジネスは成立する。

ブランドは芸能事務所のよう
ファッションブランド店「CIAOPANIC TYPY(チャオパニックティピー)」もお客様との距離が近くて、驚かされる。店のスタッフ、ユキノさんはぱっと見、目立つ存在でもなかった。話しかけてきてくれたから、話を聞いた程度だったのだが、聞けば五千人のフォロワーを抱えている。23歳という若さにしてもはや人気者ではないか。いかにして「人気者になったのか」を尋ねると、それは自らの工夫によるもの。

せっせと毎日、更新して、写真を撮り溜めしておく。それでも服の数には限界があるから、カフェで上半身メインに撮影して、店とのコーディネイトで魅せる。いつしかインスタグラムのおすすめに出るようになって、そこからフォロワーがついたわけだ。

会社のプッシュなどを受けたものではないからこれも実力だ。

まるで、お店は芸能事務所のようである。個々の個性を育てる場所になっていくのか。人気者はファンによって成立するから、お客様を大事にするし、お客様はそれでブランドを好きになっていく。個々を育てることで、お店の価値が向上するという理想的なサイクル。まさにニッチを育てた結果である。

正直「なぜ亀戸に商業施設なのか」そう思う部分もなくはなかった。けれど、数々のお店を見てきて、もはや「大きく取りに行く」時代ではないと思ったし、寧ろこれが「今」なのだと思った。小さなマーケットも見逃さず、お客様に近いところから小さくとも風を送り込む時代に変わっている。だからこういうハコが必要なのだ。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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