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通販のレベルで「物流」の役目はこうも変わる

大手も着目した新進気鋭の物流企業の先見性
最近、ネット通販の需要が増えるほど物流の大切さも説かれるが、その中身について、実際、どう向き合えばいいのか、それが見えてこない。思うに通販企業は、物流を切り離して考えず、味方につけて、それぞれのレベルに合ったやり方で、通販としての価値を最大化するべきなのである。その本質を辿るために、敢えて通販と物流の結びつき方について考えてみたいと思う。

まず、それはレベルごとに違う。最近の時流として、脚光を浴びているのは、BASEなどのスタートアップ系の企業に絡んで注目を集めている、オープンロジという企業の仕組みである。2013年創業の企業でありながら、最近、大手の住友商事並びに、住商グローバル・ロジスティクスと業務提携したほどで、今の時代を象徴する物流の在り方である。

今の時代に相応しい平準化
オープンロジの魅力は物流の平準化であり自動化だ。敢えて彼らは荷主に決められたフォーマットで物流の対応をしてもらい、平準化させて、荷主と、多数の倉庫会社や配送会社とを効率よく紐付けて、コストなどを軽減しているわけである。

故に「初期費用のかからない従量課金制としたい」といったニーズに確実に応え、成長してきた。確かに、スタートアップをはじめとする企業は、なかなか物流にリソースを割けないので、オープンロジのこのような自動化は歓迎される。

大きくなるにつれて必要な物流のカスタマイズ化
では、逆に物流が通販と密接に関係性を持つことで、通販の価値を上げている例を挙げてみよう。そこで取り上げたいのが、流通サービスという企業である。

この会社は最近、最新鋭の「AGV」という、搬送用の自動ロボットを入れたのだが、そこに至るエピソードが、まさにそうである。流通サービスは「オルビス」の物流を担っていて、基礎化粧品やスキンケアなどの通販で有名である。「オルビス」がまだ1日数百件という時代から繋がり30年来の付き合いである。
 
先程の「AGV」という機械の話においては、今から2年前から構想が始まっている。発端は「オルビス」から提示された「今の現行件数の1.3倍を目指したい」という要望にある。

AGVは数あれど、唯一の仕様にたどり着く
色々紆余曲折あった中で、彼らがたどり着いた結論は「AGV」という搬送車を利用することだったわけであるが、その事実だけを抜き出したところで本質は見えてこない。

実は、彼らが今導入している「AGV」は、元々存在する「AGV」を独自に、オルビス仕様に改良したもの。「オルビス」通販の特徴が密接に絡んでいて、それは「1受注に対して8〜10件のピックが必要」ということ。他の通販よりも圧倒的に多く、例えば、基礎化粧品など1商品に対して複数サンプルがつくことが多い同社ならではの特色なのである。

そこで、世の中にある様々な「AGV」のうちの一つのモデルを改良して「1オーダーに対して1台用意する」仕組みを考えつくのである。

オルビスにしか通用しない仕組みがある
これは、どうやってもオルビス社内で工夫して見出せる答えではない。流通サービスには物流に関しての知見に加え、長きにわたる「オルビス」通販の特徴を抑えていたからこそ、元から存在する上記の「AGV」を関連会社と連携し、改良して日本で唯一無二の仕様に変えて、その物流増を実現させたのである。結果、処理能力は導入前1800件/時に対し、導入後は2400件/時と約30%の大幅増となった。

カスタマイズには費用もかかり、物流側の投資額は10億円。流通サービスの年商は250億円なののもかかわらず、である。だが、長きにわたり関係性を築けているから、今後を見越して、思い切った投資が行え、それが「オルビス」通販の上昇と合わせて、自らの業績という形に跳ね返って、お互いがウィンウィンとなる。この通販側だけでは解決できない物流の視点で、通販そのものの価値をあげたのである。どちらが欠けても成り立たない。

だから「AGV」など機材の性能の良し悪しではない。むしろ通販企業にはそれだけ多種多様な個性があり、それに伴ういろいろな特徴があるからこそ、物流側がその特徴を熟知して「AGV」なりの機械をどう取り入れ、物流の仕組みの中でいかに反映させて、最大化できるかが大事である。

この「オルビス」物流の物量増の話と、最初に話した物流の「平準化」の話と比較をしてみると、同じ物流でも、考え方に差があることに気づくだろう。ブランドなりお店の規模感に応じて、物流の扱い方は変化していくわけで、通販は俯瞰的に見て、目先の売り上げだけではなく、物流をうまく味方につけつつ、生産性を高め、自らのブランド価値を上げるために必要なのは何かを考えることが大事なのだと思うのだ。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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