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リアル店は接点の強みをデジタルでどう生かすのか

リアル店が従来の考えにとらわれると淘汰される
国内のリアル店舗もデジタルを取り入れながら、従来の考え方とは違うアプローチをするようになってきました。ただその時にリアルの拠点はどうあるべきなのでしょうか。

僕は「BRANDE」というお店にいきました。運営しているのはカスミという企業です。茨城県や千葉県を中心にスーパーマーケットを展開しており、同企業の実験的な取り組みをしている店舗です。

秋葉原から電車で約1時間程度、つくばの研究学園という街にあります。辺りを見回すと開発されていない土地も少なくありません。その分、住宅地も新しく住民にも若いファミリーがいます。この一帯でデジタルを起点としたスーパーマーケットの取り組みをすることは理にかなっているのかもしれません。

チェックインはデジタルへの入り口
店の入口にはチェックインのQRコードがあります。これらは「スキャン&ゴー」というアプリで読み取ります。チェックインすれば、店内の商品をバーコードで読み取るだけ。自動的にカートに入るので、クレジットカードやPayPayで支払いが可能です。キャッシュレスで済ませることができるので、レジがいりません。

それゆえ、レジでもなんでもない場所がレジになります。店の真ん中に休憩スペースがあり、そこでは「決済ができます」という小さなパネルが掲げられています。当然、レジのスペースも小さくて済みますから、フリースペースが増えます。

カスミの田中社長はこれから「顧客体験を向上させたい」と述べています。つまりこの余裕が生まれた場所で、試飲、試食などを通して、新しい商品との出会いを創造したいというわけです。

調理スペースもありました。豊富な食材が元からありますから、調理できる素地はあります。そこに、オーディエンスを募れば、強みが最大化されて、料理を通してエンタメ空間になりうるわけです。

エリア単位で在庫をケアしてリアル店を補完
仮に、それらの商品を買いたいという時に商品がなくても大丈夫です。「スキャン&ゴー」での自分のアカウントを使ってネットスーパーを活用すればいい。カスミではバックヤードとしてIgnicaという仕組みを取り入れて、店単位での在庫も可視化しています。

そうすれば在庫状況を店単位ではなく、エリア単位で把握できます。つまり、リアル店で在庫不足でも、ネットスーパーを通じてそのフォローができます。リアル店が他のリアル店によって、その付加価値を高めているわけです。

すると、スタッフはお客様の満足度を高め、コンシェルジュとなることが推奨されるようになっていくことでしょう。より人間的な場の追求です。しかも、デジタル化が進んでいるので、その中身をタイムリーに反映して、対応が可能になります。自ずとロイヤルカスタマーを重視していく流れになるでしょう。

これは僕の予測ですが、調理場があるので、ここが料理を作る場として成立すれば、そのネットスーパーの配送網を使って、フードデリバリーも可能になるはずです。そう考えるとお店はネットスーパーの倉庫であり、フードデリバリーの調理場であり、来店客にとってのエンタメの拠点となって、全く違う様相になります。

イオンも顧客の動向を追う
さて、お客様を特定して、商品との関係性で追うと、今までにないデータも集まって、それが施策につながります。これは、先日、リテールテックでイオンの菓子さんという方の話です。イオンはPB商品「トップバリュー」を扱っていますが、こんな話をしていました。

昨今、原材料費の高騰で値上げが続いています。しかし「トップバリュー」では値段を据え置きにしました。それに伴い、一部のお客様で従来品から「トップバリュー」の購入へと移行して、その売上が上がりました。そして、大事なのはそういうお客様が誰かを明確にすることで、気づきを得たと言います。

実際に、「トップバリュー」の購入が一品ではなく複数だったお客様がそのうちの36%。特に、フロサリーで定着したお客様は他のPB商品も買う傾向が高いようで、トップバリューで構成された率は20%増加したと言います。

加えて、PBで構成された率が上昇しているのは、定着顧客の69%を占めているといいます。つまりPOSで売れた数だけを見るのではなく、その推移を追うことで、自分たちが何を提供し、誰をフォローしていくべきかを可視化しているわけです。イオンの場合で言えば「アイイオン」というアプリを軸に推進していくといいます。

顧客分析に基づき、顧客単位でアプローチを工夫するのはデジタルの強みでした。ただ、リアル店は直接、接点を持ち、体験価値を高めて、関係性を深められる強みがあります。今後、この点を理解したリアル店舗が、デジタル単体の小売企業に対して、どう施策を打ち出していくか。

ここがリアル店が、生き延びる上での焦点になります。それは、同時にEC事業者にとってはパイを取り合う場所に変わっていきますから、自らもまたその顧客体験の向上をどうやって築いて、お客様を定着させていくかが肝となるでしょう。今日はこの辺で。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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