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「EC通販のヒット商品○○が姿を消す!?」連載2:変わるEC通販売れ筋商品

■通販トップの顔が凍り付いた瞬間

(前号からの続き)「赤帽のUber版である PickGo はどうなんだ。」「香港のlalamoveも熱い」など、その後もオンデマンド物流談義に花が咲いていた。
が、参加者の一人から「オイシックスドット大地(以下オイシックス)」「ホールフーズ」というキーワードがこぼれ出て、数分後には全員の顔が硬直する。オイシックス、ホーフフーズ、いずれも日本とアメリカを代表する有機野菜・無添加食品・オーガニック食品を手がける最大手だ。特にホールフーズは、2017年にAmazonが買収したことで、従来利用していた宅配システムの「インスタカート」に替えて、「Amazonプライムナウ」による2時間以内の宅配システム機能を手に入れた。インスタカートやプライムナウとは、いずれも数時間以内で宅配をしてくれるサービスで、たとえばプライムナウの場合、35ドル以上購入すれば2時間以内の配送が無料となる。対象は、オーガニック生鮮品以外に、日用品や花までカバーする。実際に、筆者が2018年春にサンフランシスコのホールフーズを訪れた際は、ちょうどインスタカートのサービスが「Amazonプライムナウ」に切り替わるタイミングだったようで、棚に貼られた真新しいAmazonプライムナウの札が、オーガニック専門店内で斬新に写った。
つい最近までは、本来の企業文化や優位性を見失っているだの、トレーダー・ジョーズなど競合チェーンの追随で業績不振だの、とメディアに叩かれ続けてきたホールフーズだが、救世主 Amazonによって新しい道を歩み始めたように思えた。そんな話しをしていると、ほぼ同じタイミングで発表された、AmazonとJPモルガン等との「ヘルスケア事業」の立ち上げがどうも怪しい、という話題になった。

■顧客が求めているのに、売りにくい商品と売りやすい商品
健康食品やサプリメントに長年携わっている通販担当者なら、ホールフーズとヘルスケア産業という「キーワード・セット」には敏感にならざるを得ないだろう。というのは、アメリカのヘルスケア事業の市場規模は、2020年で約311兆円が予想されており、日本でも26兆円とされている(首相官邸・日本再興戦略より)。うち、ECや通販と親和性の高い「健康食品・サプリメント」は、2017年で約1兆2千億円の市場規模(日本健康産業新聞調べ)となっているが、成長スピードは微減でやや低迷の兆しとなっている。
その一方で、トマトジュースで有名なカゴメは「血中コレステロールが気になる方に」と、トマトジュースに機能性表示食品としての「付加価値」をつけることで、トマトジュースの売り上げを前年比20%増の198億円(2016調べ)まで伸ばした。参考までに2018年の総務省調べによるとトマトそのものは、日本国内ではおよそ3000億円の市場を持つらしい。カゴメの勝因は明確で、HDL-コレステロール(俗にいう善玉コレステロール)へのリコピン効果のユーザ期待からのようだが、その効果云々についてはさておき、いずれにしても従来の健康食品市場のニーズに、高付加価値食品が参入し始めている、というトレンドが日本で起き始めている。これをサプリメント離れ、ととるか、スーパーフード・ブーム到来の前兆と捉えるか、で今後の商品戦略は大きく変わる。たとえば、2017年ホットペッパー 流行グルメ1位は「スーパーフード」だ。いわゆるサプリで手軽に、という感覚から、「食べてキレイに」「食べて健康に」といったメニュー、特に「アンチエイジング」をキーワードにした食のメニューが上位にランクされたのである。インスタ映えやセレブなどの一時的要素に支えられた面もあるが、安易に広告を信用しない、ケミカルな食べ物への拒絶感、といった風潮もあるようだ。

米ホールフーズでも、レジ前のコーナーにはオーガニックサプリメントがズラリと並ぶが、どの店舗でも一様に入り口を飾っているのは色とりどりの「有機野菜」群である。サンフランシスコの生活やガジェット情報を発信しているVloggerドリキンさんの動画では、ホールフーズの競合、トレーダー・ジョーズで購入した有機野菜をジューサーで毎朝野菜ジュースにしているシーンが紹介されている。医療費も保険料も高い、いわゆる「予防医療」が盛んな国を象徴するシーンでもある。
ドリキンさんの動画:https://goo.gl/1hUc35

■数千億円の市場が、付加価値で数兆円に化ける
ただ、こうした原材料モノは一般的な通販屋は嫌がるのが通常だ。理由は簡単で、原価が低いので広告宣伝費のCPAがあわないのだ。しかし、最先端の農業ビジネスの現場では、原価は下げられるという。厳密にいえば、付加価値をつけて売価を増やすのである。ただ、問題は需要が伸びているものの、跡継ぎは都会に出てしまい人手が無い。土地も作物が育たつような肥沃な土地はもう無い。そもそも農場運営のマニュアルも無い。そんな「人手不足」「土地不足」「ノウハウ不足」に悩む農家の方々が、今まさに、スマホ、人工知能、ネットを駆使して、新しい需要に応えるべくハードルを突破している現状を教わったのである。(次回に続く)

JECCICA客員講師

株式会社ISSUN 代表取締役 宮松利博

1993年、独自に開発した顧客管理システムで営業業績を伸ばし、1997年システム売却。1998年、インターネットに公開したフリーウェアがヒット。そのヒット要因を解析するツールを開発(現在のGoogleアナリティクスの簡易版)し、2000年からECで活用。EC立上げ初年度で月商1億円に急成長するも数年後に上場失敗。新たなECを3年で年商20億円に成長させ(現ライザップ)、2006年株式上場と同時に保有株を売却、海外視察の後、2011年「小よく”巨”を制す」株式会社ISSUN立上げ。WEB/ECの運営・制作・コンサルティングで、業界No.1に成長するクライアントを多数抱える。2017年には、EC業界と大学との連携強化を目指した日本イーコマース学会を数名と立ち上げ奮闘中。


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