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EC市場で調査。SMS※配信で商品が売れるのか?(※Short Message Serviceの略)

EC市場でユーザーとの接点が取れる配信チャネルは、アウトバウンド・インバウンド(コール)、DM(ダイレクトメール)、メール、LINE@、プッシュ通知(アプリ)、WEB接客、LIVEが連想されるでしょう。日本のEC市場では、メールアドレスの登録が必須になることが多く、オフラインで注文を受けるインバウンドでは、メールアドレスを取得しない場合もあります。そして、取得したメールアドレスをもとにメール配信で情報配信(アップセル・クロスセル)をするのが一般的であります。

ところで、本題の「SMS配信で商品が売れるものなのだろうか?」の答えですが、あるEC事業者で検証したところ、爆発的には売れないが、費用対効果として、掛けたコストを回収できたという結果となりました。実験したEC事業者はコンプレックス商材を複数扱っており、普段はメールで情報配信をしていました。メールマーケティングの課題としては、メールを頻繁に送り続けることで受信を拒否されたり、ユーザーがメールアドレスを変更したりして、配信できる割合が減る点などが挙げられます。

そこで、2つのセグメントを中心にSMS配信のテストマーケティングをしました。

(1)メールアドレスが変更されている

(2)メールを送っても開封・アクセスが無い

上記の2つのセグメントを選択した理由についてですが、まず(1)の場合は、メールアドレスが変更されている為、メールが届いていないので、欲しい情報を受け取れていないと想定しました。ユーザーが興味があるにもかかわらず訴求できていない可能性もあるので、確実に受信できるチャネルで試してみる価値があるからです。

(2)は、全く興味がないとも捉えることができるのですが、何等かの問題でメールが届いていないという可能性もあります。例えば、PCだと迷惑メールボックスに入って気が付かない場合があり、モバイルアドレスだと、キャリアの迷惑メール対策で、携帯端末にメールが受信できていない可能性もあります。また、メールを開封・アクセスしない層に対し、配信チャネルを変えて訴求することで開封率やアクセス率が変わるかも知れません。

SMS配信は有料で15円/件(相場)が掛かるので、大量に配信することは投資となります。無料であれば、沢山のEC事業者が利用すると予想できますが、文字制限などの兼ね合いもあり、あまり有効活用されているとは言えない現状です。投資回収の判断軸としては、1回の購入ではなく、一生涯利用しないと仮定した場合、ユーザーがSMS配信のキッカケで再購入して、リピートいただくことで投資効果を引上げます(LTV意識)。

今回のテストマーケティング結果からは、売上から商品原価を引いても、SMS配信の費用を捻出することができたのです。ユーザーに直接感想を聞いた訳ではないので、確実なことまでは把握できていませんが、EC事業者からの情報配信が何等かの原因で遮断されていたことが予想されます。

また、従来のメルマガは大量の情報に埋もれていたり、配信元やタイトルだけを見て削除されていたりするため、開封・アクセスまでに至らなかったということも考えられます。

SMSが携帯端末に届く文化があまり浸透していないことからかもしれませんが、SMS配信で費用対効果が合うという結果には驚きがありました。懸念する点としては、文字数に制限がある為、長文での訴求ができずに簡素的な短文となりますので、訴求力は弱くなります。また、ユーザーがSMS配信に慣れてしまった場合は、訴求ポイントに大きな変化を付けることができない為、継続的な効果が見込めない可能性があります。

SMSを配信する際は、ECへ誘導・CV(コンバージョン)を確認する為、URLに効果測定用のパラメーターを付与します。サイトへ誘導した件数や、商品を購入したCVの件数・確率などを計測します(その設定をしないと、費用対効果が合っているかを確認するのが困難となります)。また、効果的と考えられるのは、EC初回利用者からアクションが無いユーザーへ、SMSボックスにECへ推移するURLを残しておくのはアリかもしれません。

単品リピート通販では、複数のチャネルでユーザーとコミュニケーションを取ることが多いです。ユーザーは有益な情報を求めていますが、適切なタイミング・適切な訴求がされない場合は、逆効果となってしまいます。本当に情報を求めているユーザーには、満遍なく情報を届ける方法として、SMS配信を検討するのも必要かもしれません。

今回のテストマーケティングで分かったことは、SMS配信から休眠掘り起こしに繋がったということと、わずかな情報量(文字数)とURL(短縮)しかないのに、20%以上のアクセスが取れたことです。SMS配信を起点にEC利用に繋がったことから、ユーザーの意思以外でECを利用していないケース(ECサイトへ行く機会が無かっただけ)があるという証明にもなりました。

SMS以外にも、普段利用していないチャネルとして、DM施策でも結果に直結する可能性を秘めているということです。EC事業者の皆様は、現在行っている配信チャネル・訴求方法が自分の業種・業態に合っているか、テストマーケティングで実験するべきだと感じました。SMS配信が全ての事業者で費用対効果が合う訳ではないかもしれませんが、コツコツと、取りこぼしを無くす1つの選択肢としていただけましたら幸いです。最後までの閲読を有難う御座いました。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 和田 聖翔

株式会社FID 代表取締役
1984年富山県生まれ。2011年株式会社FIDを設立。2013年ショッピングカートASPサービス「侍カート」の提供開始。2016年フルフィルメントサービスを開始。EC事業者の総合支援企業として活動中。


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