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企業の定義が音を立てて崩れてく

小売店はものを売るだけの場所ではない

これからの時代、「小売店」は「ものを買う場所」、「飲食店」は「食べにいく場所」、「配送企業」は「ものを届ける会社」などという企業の定義で見るのは「もう古い」と言われる可能性を秘めていると思う。

8月1日に、新宿と有楽町にオープンした「b8ta(ベータ)」は「小売店」でありながら「売ることを主としないお店」と定義する。店内には商品とその商品の詳細を示すタブレットが置かれているが、多くは体験することを目的にしている。

そこに陳列された商品の多くは奇抜な、他では見られないもので形成されており、そこに来店するお客様がそれを不思議そうに触ってみたり友達とリアクションをする光景がよくみられる。

この「b8ta(ベータ)」が売りにしているのはそうしたお客様の体験データであり、体験するほど、体験データはその商品のメーカーにフィードバックされる。商品は場所ごとセグメント分けされ、天井にはAIカメラがあって、お客様がどの商品に対して立ち止まり、滞在したのかなどを把握していて、データ化。デイリーで更新されるのだ。

スタッフも売り上げがノルマではなく、商品についての知識がどれだけ深いかのテストに合格してから店頭に立つ。店員はプレゼンテーターなのである。

ベータジャパンに出資しているカインズなどは「開発中の商品をそこで展開することで、消費者目線のヒットに繋がる商品開発ができる」と話しているし、同じくベータジャパンに出資しているマルイも体験型という要素に強い関心を抱く。リアルに存在するお店の価値を「主として売らない」ことで、別に見出したのである。

 

配送はものを届けるだけではない

その他、30分ほどで近隣のお店から商品を配送するエニキャリという会社も、飲食店に新たな価値を見出している。代表取締役小嵜秀信さんは『今まで飲食店は「お客さんに来てもらう」のが当たり前だったけれど、これからはお店自体が「お客さんのところへ行かなきゃいけない」ニーズも生まれてくるだろう』と話しており、エニキャリはそこを繋ぐ為の「配送」なのである。

店は、本来人件費など、いきなりお客様のところへ行くビジネスを展開することは難しい。しかし店の発想次第では商品を開発することはできるので、エニキャリはそれらのお店の今までできなかった商品を「届ける」役目に徹しようと考え、配送に着目したのだ。

彼らの視点が正しかったことは、今、新型コロナウイルス感染症に伴い、食べにきてもらうこと以外にビジネスを模索しない限り、飲食店は事業として厳しい現状である事からもわかる。フードデリバリーの隆盛はそれが原因である。

 

少し話が逸れるが、配送の大手、ヤマトホールディングスがDoddle Parcel Services Ltdと提携したのも、ヤマトなりの「届けるだけではない価値」を追い求めた工夫だと睨んでいる。Doddle社は英国、オーストラリア、米国で「ネット通販における購入商品の受け取り・返品システム」を確立している。

ヤマトとしてはDoddle社の「Click&Collectシステム」というシステムを使えば、あらゆるドラッグストアやスーパーマーケットなどが簡単に「店舗受取」の仕組みを導入でき、一般化させることができると考えた。また、それらの店は荷物の受取をきっかけに来店を促すことができると言えよう。つまり、ヤマトは届けるだけではなく、配送のプラットフォームになろうとしているのではないか。

アマゾンジャパンも、ライフ・コーポレーションと連携して、Amazonで購入した生鮮食品などを、短時間で、お客様の近隣のスーパーマーケット「ライフ」から届けるとしており、これも「ライフ」の魅力を配送を軸に違った価値で、見出した例である。

 

飲食店は食べる場所を提供するだけではない

先ほど、飲食店の役割が変化しつつあることを触れた。それこそ「食べてもらうこと」が体験であり、お客様との関係性の深さを築く為の要因と位置づければ、普段から食べにこなくとも関係維持されている要素をネットで確立することで、飲食店に伸び代があると思う。

この点、オイシックス・ラ・大地はよく抑えていると思っていて、8月14日、大戸屋ホールディングスと業務提携を行い、家庭での大戸屋定食の再現を目指すとした。オイシックス・ラ・大地が得意とするのは、野菜で確立したように、サブスクリプションに繋げるビジネスのあり方。大戸屋には既に固定ファンがいるけど、それを継続に繋げられていないからこそ、「食べにくる」以外の価値で、継続顧客を狙い、相乗効果を図ろうということなのではないか。

 

従来の枠組みで事業をやるのではなく、また何かに依存することなく、時代に合わせて適材適所で役割分担をすることで、新しい魅力を作り企業価値を高めていかなければならない。今一度、頭の中をシャッフルして見つめ直すことで、未来に繋がる道が見えてくるように思う。

 

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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