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顧客対応における期待値コントロールという考え方

日本ではおなじみの「お客様は神様です」という往年の大スターの名フレーズ。意味が拡大解釈されているところもありますが、このフレーズの浸透により、日本では、商売においてお客様を大切にすることが重要。という価値観が広く一般的になっているように思います。世界と比べて日本のサービスレベルが高く評価されるのは、こういった文化背景があったからでは無いでしょうか。

しかし、実際には、お客様を満足させるということは、そう簡単なことではありません。
お客様のことを親身に考えて対応しているのに、お客様に満足してもらえなかった。満足してもらえなかったのは、まだまだ努力が足りないからだ。そう考えて、真面目に頑張り続けたスタッフが、残念ながら成果が出ず、身も心も疲弊してしまった。なんて悩みも聞こえてきたりします。

顧客対応で、お客様に満足してもらうために必要なのは、やみくもに努力することではありません。あるポイントを抑えて対応することが大切です。
今回は、顧客対応における「期待値」というテーマについて考えてみたいと思います。

ところで、お客様が満足をするとは、どのような状態なのでしょう。
お客様が満足した状態とは、お客様がそのサービスに対して、よい評価をしたという状態です。
サービスには、テストのように、客観的に公平に評価される仕組みがあるわけではありません。評価が作られる対応内容について、さまざまな議論がされますが、実はその評価を決めるものは、ほとんどの場合、ユーザーがそのサービスに対して感じる「印象」だと考えています。
つまり、お客様に満足してもらい、よい評価を得るためには、「よい印象」を抱いてもらうことが重要ということになります。

それでは、どのようにして「よい印象」は生じるのでしょう。
よい印象は、成果がお客様の「期待値」を上回ったときに生じます。逆に、成果がお客様の期待値を下回れば、当然、悪い印象が生まれることになります。

この期待値の考え方。会社の仕事での評価を考えてみれば、ごく当たり前のことですが、サービスにいてお客様からの評価を上げるためにはどうすればよいか。という話になると、なぜか、奇妙に精神論(お客様が言われたことには、とにかく絶対!)に傾いてしまう人が多いように思います。

お客様からの要望には、どんなことでも柔軟に応えようとする姿勢は大変好ましいですが、どんなに一生懸命努力しても、結果的にそのお客様の期待値を下回る対応しか実際にはできなかったとしたら、当然印象は悪くなり、低い評価になってしまいます。

また、お客様からするとそれほど重要ではない対応に力を入れることも、この期待値という考え方をすれば、そのサービスがよい評価を得ることができないのは当然のことです。
ユーザーが求めていない対応を一生懸命やったとしても、評価は上がりませんし、それどころかそのような対応に労力と時間をとられ、お客様が本当に必要としている対応での期待値が下回ったりすると、「このサービスはよくない」という評価になってしまいます。

少数の低い評価のせいで、そのサービスが良くない評判になることはありません。良くないと評判のサービスは、やはり期待値を下回る対応が多くなっているはずです。

では、お客様の期待値を上回るためにはどうすればいいのでしょう。

一つは「対応レベルを上げる」。もう一つは、「お客様の期待値を下げる」です。
サービスとして対応レベルを上げて、お客様の期待値を上回るようになることは、もちろん重要ですし、努力すべきことだと思います。しかし、それよりも、お客様が自由に期待値を上げすぎないようにコントロールしてサービス設計をすることが、正当なサービス評価を得て、結果的にお客様に満足してもらうために重要です。

そこで、わたしは、適切に期待値をコントロールするために、次のようなポイントに注意してサービスを設計しています。

<1>できないことをできるような表現をしない

「やってもらえる」「この対応が得られる」とお客様が思ったことに対して、後から「できません。」とする対応は、最も期待値を下げる対応になります。
サービスにおいては、提供できること、できないことを明確にし、お客様が過剰に期待値を上げないようにすることがまず大切です。

<2>苦手なことは提供しない

頑張っても、期待値を超えることができそうにないことは、最初からサービス内容に含めるべきではありません。それって、当たり前のことじゃない?と感じるかもしれませんが、いざサービスを始めると「お客様の声」にはすべて対応すべき、という圧力が生まれ、組織のリソースやカルチャー的に満足な対応ができないこともしないといけない雰囲気になった。という状況を見聞きします。

苦手なことで、マイナス評価を得るくらいであれば、その対応はきっぱり辞めて、評価を得る自信がある対応に注力する。こちらの方が結果的に、期待値を下回る機会を減らし、期待値を上回る機会を増やし、お客様のよい評価を得ることを増やすことに繋がります。

<3>現実的で具体的な目標と対応範囲を設定して共有する

「伝説の顧客対応」のようなストーリーは、感動的で、サービスを提供する側からすると、いつかうちもそうなりたいと憧れを感じるものです。
しかし、実際の現場に、いきなりその伝説の再現を求めても、普通はうまくいきません。

まず、そのサービスにおいて、実行可能な対応内容・範囲と現実的な成果目標を具体的に設定して、それをメンバー間で共有。メンバー皆が同じレベルで対応をできる状況を作ることが必要です。

お客様の期待値をコントロールする。特に期待値を下げる。とういう表現が、お客様を軽視している、とか、サービスレベルの向上努力をせず怠慢だ、と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、私は決して、極端な効率主義に走るべきだということを言っているわけではありません。

ビジネスとしてサービスを提供していくためには、お客様からよい評価を得続けていくことが絶対条件です。その努力の方法として、スローガンとして「顧客主義」を掲げ気持ちだけで対応するだけでは不十分で、お客様からの評価が上げるための具体的な方法を考えて、それを実行する努力をすべきといいたいのです。

そのためには、顧客対応においても、メンバーの個々の対応力に任せるだけでなく、具体的で計測可能な達成すべき目標を定め、誰が行っても同じ効果が得られる定形作業内容を作ることは必須です。

このような話をすると、画一的でマニュアル作業的な対応は、顧客対応としては好ましくない、お客様には心で対応すべきである。という意見を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、わたしは、この期待値コントロールの考え方をもとに、ホームラン(顧客からの最大の称賛)を狙いつつも、ヒット(無理なく、最短で、顧客の期待値を下回らない対応をする)を安定して積み重ねるロジックとそれを実施できる体制を作ることが、結果としてサービスが評価される近道だと考えています。

そして、評価されるサービスになることが、お客様への感謝に応えるサービス事業者の使命だと考えています。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 小野雅之

ミューズコー株式会社
サービス企画本部 プロモーショングループ部長 小野 雅之


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