JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

最新セミナー・イベント情報
お申込みはこちら

2026年 年頭所感 石郷学

「内側を磨く人だけが、道具を武器にできる」

新年あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になり、誠にありがとうございました。

年のはじめに、何を書くべきか。数字やトレンドを語ることも大切ですが、今年はもう少し“根っこ”の話をしたいと思います。先日、渋谷サクラステージで行われた「SAKURA CREATOR’S MARKET XG」に足を運びました。

404 Not Foundのプロデューサー・石川武志さんに誘っていただいたのですが、そこで、ひと目見て「何かが違う」と感じるクリエイターに出会いました。

福岡出身のイラストレーター、chikame*さんです。線は繊細なのに、世界観は揺るがない。色づかいはやさしいのに、作品全体から放たれるエネルギーは確かに強い。話を聞くうちに、その理由が少しずつ見えてきました。

彼女は、中学生の頃に一度、絵をやめています。小学生の頃は、息をするように絵を描いていたそうです。しかし中学で、「圧倒的に絵の上手い子」と出会い、心が折れた。

「筆を折った、という感覚に近かったです。傷つきたくなくて、描くのをやめました」

その話を聞いたとき、映画『ルックバック』が頭に浮かびました。描くことが好きだからこそ生まれる、比較と挫折の痛み。

彼女自身も、「初めて見たとき、“私だ”と思いました」と語っていました。それでも、絵への想いは消えなかった。

ただ、「もう一度描く」勇気が持てなかったのです。美大には進まず、進学校から一般大学へ進み、経済を学び、社会に出ました。

本屋で働く中で、アートと世界観をセットで伝える展示に触れたとき、再び心に火が灯ります。兄から譲り受けたタブレットで描き始めた瞬間、「好き」が一気に戻ってきた。

あのとき折ったと思っていた筆は、実は折れていなかったのです。彼女の作品が印象的なのは、技術だけではありません。

テーマが明確で、思想があります。哲学書を読み、言葉を愛し、「言葉にならない空気や質感を、絵で表現したい」と語る。

代表作のひとつ「Reflect Love」は、「恋に落ちたとき、相手は鏡になる」という発想から生まれた作品です。表現したい内面が先にあり、その手段として“絵”が選ばれている。ここで、強く感じたことがあります。

もし彼女が「絵の上手さ」だけで勝負していたら、今の彼女はいない。比較に疲れ、再び筆を置いていたかもしれません。しかし彼女は、自分が何を感じ、何を吸収し、何を表現したいのか。その内側を育て続けた結果として、絵を“武器”にしました。

これは、絵の話に限りません。AIも、ECも、まったく同じだと思います。どのAIを使うか、どのツールが正解か。

その前に、自分たちは何を表現したいのか。どんな価値を届けたいのか。

内側が磨かれていなければ、AIはただの便利な道具で終わります。ECで言うならば、商品であり、看板であり、思想です。そこが定まらないままツールを入れても、疲弊するだけです。

彼女が描き続けられているのは、「上手くなったから」ではありません。伝えたいものがあり、それに絵が最適だったからです。道具が進化する時代だからこそ、問われるのは人の内側。内面を磨く人だけが、道具を武器にできます。

今日はこの辺で。

皆さんにとって、素敵で“豊かな”一年になりますように。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


 - お知らせ, その他, コラム, ニュース, 年頭所感

JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

Copyright© JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会 , 2026 All Rights Reserved.s