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2018米国EC視察速報:無人コンビニ「amazon GO」はヒトを減らすか

■ストレスを無くした「楽しい買い物体験」とは
今回「一歩先ゆくECは何をしているか」というテーマで米国視察してきました。ロス、ラスベガス、シアトル、と回り、最終拠点のニューヨークでこの原稿を書いています。

今回の感想を一言で述べるなら、事業の規模や目的にあわせて「ECとリアル店舗の融合」が様々な形態で「試験的に」取り組まれ始めているな、というものでした。国内でも「オムニチャネル」という表現で片付けられそうですが、少し目線を替えた方が良さそうです。たとえば街中の喫茶店、スーパーの惣菜テイクアウトコーナー、ファストフード店舗など、自社専用のスマホアプリを用意していて、行列ができない「受取予約システム」が浸透しつつありました。これはまだ日本で頻繁には見かけない光景でしょう。

こうした半自動のモバイルピックアップシステムだけでなく、昨年夏アマゾンに買収された世界最大のナチュラル/オーガニック・スーパーのホール・フーズに設置されたアマゾンロッカー、大手スーパーのウォルマートのピックアップタワーなどに見られる完全無人受取システムや

メイシーズで導入されている「モバイルチェックアウト」、クローガーやラフルズの「スキャンバッグゴー」、ウォルマートやサムズクラブ「スキャンアンドゴー」など、いわゆる「セルフレジからの更なる無人化」が進んでいました。

■Amazon Go :セルフレジすら持たない「無人コンビニ」の正体
一方で、日本のニュースでも「アマゾンが無人コンビニを開業」などと紹介されている「Amazon Go」ですが、店内は無人どころか至る所にヒトが介在しています。もちろん、基本システムは、カメラとセンサーとAIによる「レジ無しコンビニ」というのが「Amazon Go」の実態です。

1年間の社内テスト期間を終えて、「Amazon Go」1号店が一般に公開されたのは、スターバックス発祥の地でもある「シアトル」。その中心部は、米アマゾンのキャンパスが占拠しつつあり「HQ1」と呼ばれるいわば「アマゾン村」ともいえるエリアが本社で、HQ2エリアは第二本社機能を持つなどしてアマゾンによる再開発が進んでいる地域です。
そもそも、この「無人レジ」システムは「無人運転」に使われている技術を元に成立しています。筆者も、事前に特許資料などを読み込んで、どのような実験ができるか計画していたのですが、実際に天井や商品棚に設置されたセンサーやQRコードなどは圧巻で、どの商品であるかの判別はもちろん
・誰が買ったのか
・棚に手が入ったかどうか
・商品を取ったのか戻したのか
などを、複数のカメラとセンサーによって判別していました。
試しに、メガネを外し、少しだけ変装して、超高速で商品を盗み取ってみる、というテストを、店員さんの許可を得てやってみましたが、勝負はアマゾンに軍配があがり、かなりの精度だな、と感じました。ちなみに子供と同伴の場合も、自分のアプリでログインすれば二人の購入は合算されるようです。

■ホールフーズの企業文化を垣間見た

そうした仕組みもさることながら、amazonのユニフォームに身をまとったスタッフさんが、玄関や店内で常に笑顔で作業をされてたのが意外でした。amazonといえば筆者の中では登場当時から「数値化・無人化・効率化」を地で行くドライで冷たいイメージだったのですが、店員さんの愛想が良い。「便利」ではなく、「楽しい」買い物体験を、Amazonが実店舗に取り入れていたことに驚きました。たとえば、棚卸しをしているスタッフは片手にバーコードを持ち、もう片方の手はノートパソコンに置かれているのですが、このモニターがミラーになっていて真正面からしか画面内容が見られないタイプのものになっています。そこで筆者がスタッフの真後ろから閲覧しようとすると、ニッコリ笑ってモニター画面の向きを壁側にされてしまいました。右耳には小型ヘッドセットが仕込まれていたので、おそらくは監視カメラで筆者の怪しい行動を察知したモニターで監視している別のマネージャやスタッフの指示で、愛想良く振る舞いながらもその画面を隠したということなのでしょう。実際そのスタッフに聞いて見たところ、まぁ色々な指示がありますよ、と言葉を濁していました。

またアルコール販売のコーナーでは、入り口を牛耳るスタッフがいて、未成年では無いことを証明するIDカードやパスポートをチェックしているのですが、彼がまた、大変愛想が良く、臨機応変に対応していました。数人を接客する様子を見ていたのですが、これは経験者だろうな、と感じる対応が節々に垣間見られました。古くはその接客が感動を生んでいることで有名になったECサイト「zappos.com」もAmazonが買収し、徹底的に研究していました。例えば、経営層がzapposの新人研修を受けるなどして、自社に足らない部分を単なる買収だけではなく、自らの血肉とする努力をし続けてきたことを考えると、「スタッフのエクセレンスとハピネスを支援する」という企業文化のもと顧客に感動を与えながらイキイキと働くスタッフを抱えるホールフーズの買収目的の一部には、こうした「人材」にあるのではないかとamazonBooksでも感じました。

というのは、日本でもアマゾンジャパンが小田原市に日本最大の物流拠点を持っているのですが「え?そこ手動ですか?」と本来ならロボットに任せて良いところをヒトが担っていたりして、地元の「ヒトの雇用」への配慮が伺えるわけです。実際シアトルでも、地元で古く続いたお店やカフェがや、アマゾンの大規模な再開発で閉店している問題があるそうですから、そうしたヒトの雇用に対する配慮もあるのではないでしょうか。

■センサーがあなたの行動を見つめている。

シリコンバレーで注目を浴びている店舗に、b8ta store があります。自社は商品開発せず、荒削りだがユニークなガジェット商材を集めてきて販売している「b8ta」の店舗にはほとんど店員がおらず、商品説明は主にタブレットで行われます。訪問前は各商品の天井にあるセンサーとタブレットのタッチ解析で来訪者の行動を分析してメーカーにマーケティング情報を提供するビジネスモデル、ということで理解していましたが、実際に店舗に行ってみると目立ったカメラは頭上には見当たりませんでした。ただ筆者が気になったのはタブレットに設置された内蔵カメラがこちらを見つめていたことです。常に試験をしながら改善して行くという姿勢は素晴らしいな、と感じる一方で

Amazon Goでも、プライバシーに配慮して個人の特定には「顔認証」を使っていないとのことだったのですが、こうしたWebとリアル店舗の両面からユーザの導線を分析することで得られるメリットは、売上だけでなく、在庫管理・商品開発・人材育成・マネジメントなど広範囲にわたります。
今回ラスベガスでは、米国最先端といわれるECと小売業のカンファレンス「Shoptalk 2018」に 参加してきましたが、こうした分析ツールの出展も多く見られました。

またその範囲は新たに「ボイスコマース」という名前で音声にまで至っています。

いかにして分析に足るデータ量を集め、そして活用できるかがキーとなるわけですが、一方で、今回の視察予定先の店舗が直前に閉店していたり、あるいはその技術を放棄していた、ということも数回あり、こうした先進的な技術の導入やその見極めはECテクノロジー先進国のアメリカといえども失敗するんだな、とも感じました。
今回、システムで人件費を減らして事業の生き残りに賭ける企業、システムにヒトを加えて顧客満足度を向上させる企業、少ない人数からテクノロジーを駆使して古い体制に挑む企業など、最先端とはいえ、さまざまケースを目にすることができました。これらをいかに見極め、日本のECにどう落とし込むか、数多くの課題とアイデアが見えてきた米国出張でした。

JECCICA客員講師

株式会社ISSUN 代表取締役 宮松利博

営業時代に開発した顧客管理システムで営業業績を伸ばし1997年にシステムを売却。2000年、EC立上げ初年度で月商1億円に急成長するも数年後に上場失敗。新たなECを3年で年商20億円に成長させ、2006年株式上場。同年に保有株を売却し海外視察の後、2011年「小よく”巨”を制す」を掲げ株式会社ISSUNを立上げ、WEB/ECの運営・制作・コンサルティングで、業界No.1に成長するクライアントを多数抱える。2017年9月には、数名で日本イーコマース学会を立ち上げて理事としても奮闘中。


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